自動車整備士が個人事業主として独立した場合、必ず納めなければならないものがあります。
所得税と住民税、そして社会保険料です。
会社員として働いている時は、税金や社会保険など面倒な手続きは会社が対応してくれますので「税金・社会保険ってなに?」でも問題はありませんでした。
ですが個人事業主として独立した場合、これらの手続き全てを自分で対応していかなければならず「知らなかった」では済まされないことになります。
そこで今回は、個人事業主として独立した自動車整備士向けに、所得税や住民税の確定申告についてお話ししていきます。
青色申告と白色申告の違いについても解説していますのでご参考ください。
確定申告とは?
まずは確定申告の概要について解説していきます。
個人事業主としての仕事が軌道に乗るまで、複数の仕事を掛け持ちされている方も多くいらっしゃるかと思います。
確定申告を正しく行うためには、自身の収入がどんな所得かを把握する必要があります。
「個人事業主の仕事 × 〇〇 の場合はこう申告!」といった具合に、働き方別の申告方法についてもご紹介していきますのでご参考ください。
- 確定申告の概要
- 自動車整備士の働き方別、何所得に該当する?
確定申告の概要
自動車整備士が個人事業主として独立した場合、申告しなければならない税金は所得税と住民税です。
本来、所得税の確定申告と住民税の確定申告は別物で、それぞれ対応する必要がありますが、所得税の確定申告を行うことで住民税の確定申告も完了する仕組みとなっています。
自動車整備士が個人事業主として独立した場合は「所得税の確定申告をするんだ!」と思っておいて頂ければと思います。
所得税の確定申告とは
所得税の確定申告とは、1年間の所得を国に報告して、その金額に見合う所得税を国に納めることを指します。
申告対象期間、申告期間、申告方法は以下の通りです。
対象期間:1/1 - 12/31
申告期間:翌年2/16 - 3/15(コロナ等の理由により変動する場合あり)
申告方法:紙郵送またはe-taxでの電子申告
所得税の所得は事業所得や給与所得、不動産所得など10種類に分けられます。
それぞれ計算方法が異なるため、自身の収入が何所得に該当するかを把握する必要があります。
また所得税は、稼げば稼ぐほど税率が高くなる累進課税という仕組みをとっています。
収入の申告に抜け漏れがあると、税率の算定にまで影響が出てくることになりますので、1年間で得た全ての収入を申告する、という意識を持つことが重要です。
なおSeibiiでは、働いてくださっている整備士向けに、定期的に勉強会を開催しています。
質問も随時受け付けており、確定申告に関するサポート体制は万全となっていますので興味がある方は是非こちらをご参照ください!
整備士の方々へ
自動車整備士の働き方別、何所得に該当する?
所得税の所得は事業所得や給与所得、不動産所得など10種類に分けられ、それぞれ所得の計算方法が異なります。
自身の収入が何所得に該当するか把握できなければ、確定申告することができませんので、以下をご参考に把握するようにしてください。
- 個人事業主の仕事 × 業務受託整備
- 個人事業主の仕事 × アルバイト
- 個人事業主の仕事 × パーツなどの販売
個人事業主の仕事 × 業務受託整備
個人事業主の仕事は基本的に事業所得に該当します。(不動産賃貸の場合は不動産所得)
業務受託整備についても事業所得に該当しますので、売上や仕入、経費をまとめて帳簿管理して問題ありません。
確定申告の際には、事業所得として申告してください。
Seibiiでのお仕事は事業所得に該当します。
個人事業主の仕事 × アルバイト
個人事業主としての仕事に加えコンビニやガソリンスタンドでアルバイトをしている場合、アルバイトでの収入は給与所得に該当します。
給与分については事業所得とまとめて管理することはできないので、入金口座が同じ場合には給与を売上としないようにご注意ください。
確定申告の際には個人事業主分を事業所得として、給与分を給与所得として申告してください。
個人事業主の仕事 × パーツなどの販売
パーツや車などの販売をしている場合、販売する商品の入手経路によって所得区分が異なります。
中古品の購入などにより仕入をしている場合、その売上は事業所得に該当します。
一方で家庭の不用品を商品とする場合、その売上は所得として認識しません。
所得として認識しないとは、確定申告時に申告しない、つまりその分には税金が課せられないということです。
確定申告の際には、どちらの区分になるかを把握の上申告してください。
開業~確定申告までの流れ
開業から確定申告までの流れを時系列順に解説していきます。
- 独立開業(開業届の提出)
- 申告方法を決定(申請書の提出)
- 帳簿の作成
- 確定申告
独立開業(開業届の提出)
自動車整備士が個人事業主として独立した場合、まずは開業届を税務署に提出しましょう。
開業届は、新たに事業を開始した方が税務署に提出する書類となります。
住居や事務所がある地域を管轄する税務署に、開業から1か月以内に提出してください。
出していないからといって罰則がある書類ではありませんが、屋号による口座開設など書類が必要になる場合があります。
提出していないという方は、気が付いたときにご提出ください。
申告方法を決定(申請書の提出)
個人事業主が営む自動車整備に関する収入は、所得税の確定申告上、事業所得という区分に該当します。
事業所得(と不動産所得、山林所得)については青色申告制度が活用できます。
申請には期限がありますので、申告方法を青色申告にするか白色申告にするかを早めに決めましょう。
青色申告にする場合は、業務を開始した日から2か月以内、またはその年の3月15日までに青色申告承認申請書を税務署に提出します。
青色申告と白色申告の違いについては後述していますのでそちらをご参照ください。
帳簿の作成
開業届を提出し、申告方法を定めたところで次にすべきことは日々の帳簿作成です。
売上・仕入・経費などの事業に関する動きを記録して、一覧で確認できる書類を作成することになります。
青色申告と白色申告とでそれぞれ作成すべき帳簿が異なりますので、自身の選んだ申告方法にあった帳簿を作成しましょう。
作成方法としては、手書きやExcelでの作成の他、freee・マネーフォワード・弥生などの会計ソフトを利用する方法があります。
申告方法別の帳簿書類については後述ご参照ください。
確定申告
12月が終わり、年があけたところで確定申告となります。
申告期間は2月16日~3月15日となりますので忘れずに申告してください。
所得税の還付が発生する場合は、申告期間内に提出できなくても問題ありません。
しかし所得税の納税の場合、申告期間を過ぎると延滞税が課せられる場合がありますのでご注意ください。
青色申告の方がお得!白色申告との違いについて
自動車整備士が個人事業主として独立した場合、申告方法を決める必要があります。
青色申告にも2種類あり、計3種類から選ぶことになりますので、それぞれ解説していきます。
メリットや帳簿書類について、どういう方が向いているかについても記載していますので、ご参考ください。
- 青色申告(65万円控除)
- 青色申告(10万円控除)
- 白色申告
青色申告(65万円控除)
青色申告(65万円控除)についてです。
3種類の中では最もメリットの多い申告方法ですが、その分事務処理の難易度が高めとなっています。
以下の3点について解説していきます。
- 青色申告(65万円控除)のメリット
- 青色申告(65万円控除)の帳簿書類
- こんな自動車整備士は青色申告(65万円控除)が向いている
青色申告(65万円控除)のメリット
青色申告(65万円控除)のメリットは以下の通りです。
- 65万円(又は55万円)の特別控除
- 専従者(例えば配偶者)にお給料を支払える
- 損失の3年間繰り越し
特別控除についてですが「経費が65万円分増える」という認識で問題ありません。
経費は支出が伴うことが大半ですが、特別控除の場合は出費することなく経費を増やすことができ、結果として大幅に節税ができます。
なお、電子申告の場合は65万円の控除が認められますが、電子申告以外の方法により申告した場合は55万円の控除となります。
専従者給与及び損失の繰越については
自動車整備士が個人事業主となった場合の経費の考え方や家事按分について解説!
個人事業主は様々な出費を経費化できますが、なんでもかんでも経費にして良い訳ではありません。 自動車整備士が個人事業主となった場合の経費について、気を付けるべきポイントや家事按分について解説していきます。
https://seibii.co.jp/blog/contents/mechanic_self_employment_expenses/

青色申告(65万円控除)の帳簿書類
青色申告(65万円控除)の適用を受ける方が作成すべき書類は、以下の通りです。
- 仕訳帳、総勘定元帳などの主要簿
- 売掛帳、買掛帳、売上帳、固定資産台帳などの補助簿
- 損益計算書、貸借対照表
作成する書類が多く、またひとつひとつが複雑に連携しているため、手書きやExcelでの作成は困難です。
こんな自動車整備士は青色申告(65万円控除)が向いている
こんな方は青色申告(65万円控除)が向いています。
- 簿記の知識がある
- 帳簿作成は手書きなどではなく会計ソフトを使う予定
- 個人事業主の仕事が順調で、事務作業に時間が割ける
青色申告(65万円控除)の帳簿は複式簿記で作成します。
簿記3級程度以上の知識がなければ対応できない可能性が高いので、経理業務は大の苦手という方は青色申告(65万円控除)の挑戦は見送った方がよいでしょう。
また青色申告(65万円控除)は会計ソフトの利用が必須です。会計ソフトは利用料がかかりますので、そこを許容できる必要があります。
青色申告(10万円控除)
青色申告(10万円控除)についてです。
青色申告のメリットの恩恵も受けられ、かつ帳簿作成の難易度も低いため、最もおすすめできる申告方法となります。
以下の3点について解説していきます。
- 青色申告(10万円控除)のメリット
- 青色申告(10万円控除)の帳簿書類
- こんな自動車整備士は青色申告(10万円控除)が向いている
青色申告(10万円控除)のメリット
青色申告(10万円控除)のメリットは以下の通りです。
- 10万円の特別控除
- 専従者(例えば配偶者)にお給料を支払える
- 損失の3年間繰り越し
特別控除の金額が10万円となりますが、青色申告(65万円控除)とメリットはほぼ同じです。
専従者給与及び損失の繰越については
自動車整備士が個人事業主となった場合の経費の考え方や家事按分について解説!
個人事業主は様々な出費を経費化できますが、なんでもかんでも経費にして良い訳ではありません。 自動車整備士が個人事業主となった場合の経費について、気を付けるべきポイントや家事按分について解説していきます。
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青色申告(10万円控除)の帳簿書類
青色申告(10万円控除)の適用を受ける方が作成すべき書類は、以下の通りです。
- 売掛帳、買掛帳、売上帳、固定資産台帳などの補助簿
- 損益計算書
作成する書類は多めですが、書類同士の連携は少ないため、手書きやExcelでもかろうじて対応可能です。
売掛帳などの補助簿についてはインターネットでフォーマットが無料公開されていますので、参考にすると良いでしょう。
こんな自動車整備士は青色申告(10万円控除)が向いている
こんな方は青色申告(10万円控除)が向いています。
- 簿記の知識がある
- できれば会計ソフトに費用をかけたくない
- 独立直後
- 65万円控除はできないけれど、青色申告のメリットを享受したい
青色申告(10万円控除)については複式簿記ではなく簡易簿記での作成が認められています。
慣れてしまえば「お小遣い帳を勘定科目別に作成する」ぐらいのイメージで作成できますので、ひとつひとつの勘定科目の内容がわかる程度で問題ありません。
青色申告のメリットを受けられる一方、日々の帳簿作成は青色申告(65万円控除)に比べて容易になっています。
独立直後は事務作業に時間は割けないかと思いますので、そういった方は青色申告(10万円控除)が向いています。
白色申告
白色申告についてです。
メリットはほぼないため、あまりおすすめしません。
せっかくの独立、青色申告を目指しましょう。
以下の3点について解説していきます。
- 白色申告のメリット
- 白色申告の帳簿書類
- こんな自動車整備士は白色申告が向いている
白色申告のメリット
メリットはほぼありません。
帳簿書類の作成が最も簡単な申告方法ですが、難易度は青色申告(10万円控除)とあまり変わりません。
白色申告の帳簿書類
白色申告をされる方が作成すべき書類は、以下の通りです。
- 売上、仕入、経費が網羅的に確認できる書類
- 収支内訳書
売上、仕入、経費が網羅的に確認できる書類とは、まさにお小遣い帳です。
青色申告(10万円控除)との違いとしては、青色申告(10万円控除)の場合は勘定科目別に書類作成しなければならない一方、白色申告はまとめて一枚の作成で済むこととなります。
こんな自動車整備士は白色申告が向いている
こんな方は白色申告が向いています。
- 会計ソフトに費用をかけたくない、又は会計ソフトを導入できない
- 青色申告承認申請書を提出し忘れた
白色申告は手書きやExcel作成で十分に対応可能なため、パソコンがなくても対応可能です。
また向いているというには語弊がありますが、青色申告承認申請書を期限内に提出できなかった場合には白色申告でしか申告できません。
まとめ
自動車整備士が独立して個人事業主となった場合の確定申告について解説してきました。
収入が何所得かによって所得税の計算が異なってくるため、兼業されている方は自身の収入が何所得に該当するか適切に把握することが必要です。
また申告方法のおすすめとしては、青色申告(10万円控除)が挙げられます。
青色申告のメリットを享受しながらも、申告の難易度は低めになっているため、青色申告をお考えの方は是非ご検討ください。
Seibiiでは、多数の個人事業主の方に働いて頂いています。
副業から個人事業主に転向された方もいらっしゃるため、独立を目指しやすくなっています。
ご興味のある方は是非こちらをご参照ください。
(この記事は、2022年12月時点の法令等に基づいて作成されています。)