個人がお金を稼いだ場合、負担すべきものは税金と社会保険料です。
会社員であれば給与天引きで、個人事業主であれば月末と年末に納付書などで払っているかと思いますが、その負担額の大きさにうんざりしている方も多いかと思います。
その支払いをできるなら減らしたい!となるのは当然のことです。
残念ながら社会保険料の負担額を減らすことは難しいのですが、税金に関しては、知識さえあればその額を簡単に減らすことが可能です。
そこで今回は、自動車整備士が出来る節税について解説していきます。
ご紹介する節税方法は会社員でも副業している方でも、誰でもできる方法となっておりますので参考にしてみてください。
節税対策とは?
個人が負担すべき税金は所得税と住民税です。
その所得税と住民税は、知識さえあれば節税することが可能です。
節税対策とは?について以下の2点を解説していきます。
- 節税と脱税の違いに注意
- 賢く節税できる方法、所得控除について
節税と脱税の違いに注意
節税というと、何か悪いようなことをしているような、少しドキドキする印象があるかと思います。
ですが、節税は悪いことではありません。
節税とは、以下のような制度を利用することです。
- 青色専従者給与を利用して経費を計上する
- 欠損がでた場合に、給与と損益通算する
- 別居の両親に仕送りをしている場合に扶養控除を適用する など
つまり節税をするとは、自分が適用できる税制を見つけ、その知識をつけ、制度を適用して払う税金を賢く抑えることです。
一方、売上を故意に減らす・存在しない経費を計上する・家事按分率を操作して経費を増やすなどは節税ではなく脱税となり、絶対にやってはいけないものとなります。
節税のつもりでいたら脱税だったということがないように気を付けましょう。
なおSeibiiでは、働いてくださっている整備士の皆様に向け、定期的に勉強会を開催しています。
経費など他の節税方法をテーマに勉強会を開催しておりますので、興味のある方はこちらをご確認ください!
整備士の方々へ
賢く節税できる方法、所得控除について
前述した専従者給与の経費や損益通算などは節税効果が高いものの、適用できる人と適用できない人がいる方法です。
一方、全ての人が活用できる節税方法があります。それが所得控除です。
所得控除とは、所得税の計算をする前に一定額を所得から控除することを指し、納税者の個々の事情に配慮するために作られた仕組みです。
所得控除を利用することで税率をかける前の元本が減るので、結果として納付すべき税金が減ることになります。
所得控除の例は以下の通りです。
<所得控除の例>
- 配偶者控除:配偶者を扶養している場合
- 扶養控除:子どもや親族などを扶養している場合
- 医療費控除:医療費を支払った場合
- 寄付金控除:寄付金を支払った場合
所得控除全てに節税効果はありますが、今回は利用しやすい所得控除である
「生命保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除」
の3つを次の章以降解説していきます。
自動車整備士の節税方法①生命保険料控除
自動車整備士ができる節税方法の1つ目、生命保険料控除について解説していきます。
- 生命保険料控除の仕組み
- 節税できる金額を検証
- 知らなきゃ損!生命保険料控除の節税ポイント
生命保険料控除の仕組み
生命保険料控除は、民間の保険を付保した場合にその保険料のうち一定額までを所得から控除できる仕組みとなります。
節税のために保険を契約する方はあまりいないかと思いますので、必要に応じて保険を契約した場合、忘れずに適用するようにしてください。
保険の内容や契約締結の時期によって生命保険料は5区分に分けられており、それぞれの範囲内において控除が可能です。
控除金額は最高12万円となります。
<控除対象となる保険>
- 生命保険(新・旧):遺族に対して保険金が支給される保険など
- 介護医療保険:入院手術の際に給付金が支給される保険など
- 個人年金保険(新・旧):老後に年金が支給される保険など
なお、自賠責保険や損害保険は生命保険料控除対象外です。
自動車整備士の場合、それらは経費になりますので所得控除としないようにご注意ください。
節税できる金額を検証
自動車整備士の平均的な年収は400万円と言われていますが、その場合、所得税率は5~10%となります(扶養者の人数などに応じて税率は人によって異なります)。
税率5~10%で計算した場合の生命保険料控除の所得税の節税効果は以下の通りです。
保険料 | 税率5% | 税率10% |
---|---|---|
6万円の場合 | 3,000円の節税 | 6,000円の節税 |
12万円の場合 | 6,000円の節税 | 12,000円の節税 |
知らなきゃ損!生命保険料控除の節税ポイント
保険契約は節税のために締結するものではないこと、控除額が最高12万円と上限が決められていること、という2つの理由により、生命保険料控除の節税効果は大きくはありません。
ですがある方法で節税額を増やすことは可能です。
その方法とは「家族内で税率が高い人が生命保険料控除を行う」というものです。
保険の契約人と保険料の支払人は同一であることが一般的ですが、保険の契約人と支払人は別の人とすることが可能です。
(保険契約によっては不可の場合がありますのでご契約の保険会社にご確認ください。)
生命保険料控除は契約人ではなく支払人が所得控除をする(家族内に限る)ルールとなっていますので、家庭内で税率が高い人が支払人となるように契約を変更しましょう。
税率が高い方が保険料控除を行うことで、控除できる金額が増え、節税効果が高くなります。
一方、契約者と保険料の支払者が異なる保険契約を名義保険といいますが、名義保険の場合、死亡保険金など金額が大きいものには相続税などが掛かってくる場合があります。
所得控除のために支払人を変更する場合には、保険料と保険金が多額ではない、医療保険や傷害保険などを選ぶと良いでしょう。
支払人の変更手続きはご契約の保険会社にお問い合わせください。
自動車整備士の節税方法②社会保険料控除
自動車整備士ができる節税方法の2つ目、生命保険料控除について解説していきます。
- 社会保険料控除の仕組み
- 節税できる金額を検証
- 知らなきゃ損!社会保険料控除の節税ポイント
社会保険料控除の仕組み
社会保険料控除は、会社員の社会保険料など、支払った全額を所得から控除できる仕組みです。
控除が対象となる主な保険料は以下の通りです。
<控除対象となる保険料>
- 会社員の社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)
- 個人事業主などの社会保険料(国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料)
- 国民年金基金の掛け金
節税できる金額を検証
自動車整備士の平均的な年収は400万円と言われていますが、その年収の個人事業主の場合、社会保険料は55万円程度です(40歳以上、1人分の場合)。
所得税率は5~10%で計算すると所得税の節税金額は以下となります。
保険料 | 税率5% | 税率10% |
---|---|---|
55万円の場合 | 27,500円の節税 | 55,000円の節税 |
知らなきゃ損!社会保険料控除の節税ポイント
社会保険料は働いていれば払っているものであり、その誰でもが控除できる内容です。
また社会保険料は年収によって金額が定められているため、金額を自分で操作することはできません。
よって社会保険料控除は節税という観点ではあまり考えないことが多い制度です。
ですが工夫の余地はありますので、その方法を2つをご紹介します。
- 家族内で税率の高い方が社会保険料控除をする
- 国民年金基金に加入する
家族内で税率の高い方が社会保険料控除をする
一つ目は、生命保険料控除と同様「家族内で税率の高い方が社会保険料控除をする」ことです。
自動車整備士が独立した場合、社会保険料は国民健康保険料と国民年金保険料となります。
その社会保険料は自身の社会保険料控除とすることはもちろんできますが、配偶者の社会保険料控除とすることも可能です。
生命保険料控除と同様、払った人が控除対象者となるため税率が高い方へ支払人を変更してください。
尚、会社員の社会保険料は給料天引きとなっているので、その保険料を別の人が払ったとすることはできません。
そのため会社員の社会保険料を家庭内の別の人の社会保険料控除とすることはできませんのでご注意ください。
国民年金基金に加入する
二つ目は「国民年金基金に加入する」方法です。
国民年金基金とは、国民年金の上乗せ制度です。
毎月自身のプランに応じた掛け金を拠出していくことで、原則65歳以上から受け取れる年金額を増やすことができます。
その掛け金全額が社会保険料控除の対象となっているので、年金を積み立てると同時に節税することができ、お得感が満載の制度となっています。
国民年金基金は、残念ながら会社員の方は加入することができません。
個人事業主の方のみ加入できる制度となっておりますので、独立されている方はご検討ください。
国民年金基金の詳しい内容は以下をご参照ください。
自動車整備士の節税方法③小規模企業共済等掛金控除
自動車整備士ができる節税方法の3つ目、小規模企業共済等掛金控除について解説していきます。
- 小規模企業共済等掛金控除の仕組み
- 節税できる金額を検証
- 知らなきゃ損!小規模企業共済等掛金控除の注意ポイント
小規模企業共済等掛金控除の仕組み
小規模企業共済等掛金控除は、共済などの掛け金の全額を所得から控除できる仕組みのことを指します。
お金の積立制度となっており、将来的に退職金または年金として受給できるものとなりますので国民年金基金と同種の制度です。
将来の積立をしつつ節税できますので、お得な制度となっています。
控除が対象となる主な掛け金制度は以下の通りです。
<控除対象となる掛け金制度>
- 小規模企業共済:退職金を積み立てる制度
- iDeCo:年金の上乗せを行う制度
小規模企業共済は個人事業主や自営業者のみ加入可能です(会社員は加入対象外)。
一方iDeCoは会社員含め誰でも加入できる制度となっています。
小規模企業共済及びiDeCoの詳細については以下をご参照ください。
節税できる金額を検証
小規模企業共済及びiDeCoは掛け金全額が控除対象のため節税効果が非常に高くなっています。
ですが掛け金には上限が設けられていますので、その金額の範囲内で掛け金拠出、所得控除することとなります。
その上限は、以下の通りです。
- 小規模企業共済:月7万円(年84万円)
- iDeCo:個人事業主は月6.8万円(年81.6万円)、会社員は月2.3万円(年27.6万円)
自動車整備士の平均年収は400万円(所得税率5~10%となる)で計算した所得税の節税金額は以下となります。
会社員 掛け金 | 税率5% | 税率10% |
---|---|---|
iDeCo 27.6万円の場合 | 13,800円の節税 | 27,600円の節税 |
個人事業主 掛け金 | 税率5% | 税率10% |
---|---|---|
小規模 84万の場合 | 42,000円の節税 | 84,000円の節税 |
iDeCo 81.6万の場合 | 40,800円の節税 | 81,600円の節税 |
知らなきゃ損!小規模企業共済等掛金控除の注意ポイント
小規模企業共済等である小規模企業共済とiDeCoについては、やれば節税となります。
特別工夫できる点は残念ながらないので、この制度を利用する場合における、気を付けるべきポイントを二つご紹介します。
まず一つ目ですが、小規模企業共済等掛金控除の場合、支払った人が誰であれ、所得控除ができるのは本人だけという点です。
生命保険料控除や社会保険料控除の場合、税率が高い方が支払人となることで節税効果をあげることができましたが、小規模企業共済等掛金制度はこの方法は適用不可であることご注意ください。
二つ目は、一定期間引き出せない又は長期積立しなければ元本割れする可能性が高いので、拠出しすぎに注意という点です。
小規模企業共済等掛金は節税効果が高いので、上限まで積み立てた方がお得に感じるかと思います。
しかし預金とは違い簡単に引き出すことはできないため、急遽資金が必要となった場合に対応できない可能性があります。
また途中解約した場合は拠出した金額以下の受給となることも少なくありませんので、長い期間負担なく拠出できる金額を積み立てることが大切です。
【整備士働き方別】おすすめの節税方法
誰もができる節税方法として、所得控除である生命保険料控除、社会保険料控除、小規模企業等掛金控除について解説してきました。
この3つについて、自動車整備士の働き方別におすすめの節税方法をご紹介します。
- 副業の自動車整備士の場合
- 個人事業主の自動車整備士の場合
- 法人設立の自動車整備士の場合
副業の自動車整備士の場合
副業の自動車整備士の場合、生命保険料控除と小規模企業共済掛金控除(iDeCo)を活用することをおすすめします。
まず生命保険料控除ですが、家族内で税率の高い方をチェックしましょう。
保険契約を確認し、税率の高い方を支払人に変更することで少しでも節税することが可能です。
また小規模企業共済掛金控除となるiDeCoは、会社員が唯一利用できる年金積立制度です(上述の国民年金基金、小規模企業共済は会社員は加入不可)。
会社員の場合は月2万3千円が上限となりますので、毎月余裕をもって積み立てる金額を拠出金に設定しましょう。
自動車整備士の年収が400万円である場合、最大で3万円程度節税することができます。
iDeCoは会社経由で加入することになりますので、加入手続きにつき会社の労務担当に相談してください。
個人事業主の自動車整備士の場合
個人事業主の自動車整備士の場合、生命保険料控除と社会保険料控除、小規模企業共済掛金控除(小規模企業共済)を全部活用することをおすすめします。
生命保険料控除については、副業の場合と同様、支払人の変更を検討します。
また個人事業主の場合は労災保険の適用がありませんので、それをカバーするために医療保険や傷害保険の契約を追加し、所得控除額を増やしてもいいかもしれません。
社会保険料控除については、生命保険料控除と同様、家庭内の税率の高い人へ支払人を変更することで節税効果をあげましょう。
また小規模企業共済掛金控除についてはいずれかの加入をおすすめしますが、Idecoよりも小規模企業共済に加入することをおすすめします。
Idecoと小規模企業共済は制度が違うため一概に比べられませんが、小規模企業共済は拠出金の範囲内で事業資金を借り入れることが可能なためです。
法人設立の自動車整備士の場合
個人事業主の自動車整備士の場合、生命保険料控除と小規模企業共済掛金控除(小規模企業共済)の活用をおすすめします。
生命保険料控除に関しては、支払人の変更を検討します。
また個人事業主の場合と同様、経営者は労災保険が適用されないことがほとんどであるため、医療保険や傷害保険の契約を追加して、所得控除の額に含めてもいいかもしれません。
また小規模企業共済掛金控除については事業資金の借り入れができる、小規模企業共済の加入がおすすめです。
節税&貯蓄しながら事業資金の万が一に備えることができます。
まとめ
自動車整備士が出来る節税について、所得控除の一種である生命保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等控除について解説してきました。
所得控除というと難しいイメージが先行してしまうかもしれませんが、知識さえあれば誰でも納税額を減らすことができる内容となります。
是非この記事を参考に、ご自身のできる節税方法を見つけ、活用していっていただけたらと思います。
Seibiiでは副業・個人事業主問わず様々な整備士の方々にご活躍頂いています。
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