請求書・領収書・レシートなど、保管していますか?
確定申告が終わったら、捨ててしまっていないでしょうか?
請求書や領収書など、確定申告に必要な書類は法律上保管期限が決められています。
さらにR6年1月1日からは電子帳簿保存法に則った書類の保管が義務化されることとなるため、書類の保管ひとつ取っても理解が難しくなっています。
そこで今回は、副業や独立をされている自動車整備士の皆様向けに、帳簿書類の保管方法について解説していきます。
電子帳簿保存法についても分かりやすく記載していますので、ご参考ください。
自動車整備士が業務上保管するべき書類とは?
副業や独立した場合、業務上発生したいわゆる「帳簿書類」という書類が手元に残ることになります。
請求書、発注書、元帳に損益計算書などとその種類は様々ですが、短いものだと1年、長いものだと10年とそれら全てに法律上の保管期限が存在します。
帳簿書類を捨てた場合、その書類に関する計上内容が認められないという可能性もあります。
まずはどんな書類を保存しなければならないかについて、理解しておきましょう。
自動車整備士が業務上に保管すべき帳簿書類は以下の通りです。
- 業務関連(発注書、請求書、領収書、レシートなど)
- 決算関連(仕訳帳、元帳、決算書など)
- 確定申告関連(確定申告書、各種証明書)
業務関連(契約書、請求書、領収書など)
業務関連の書類とは、売上・仕入・経費に関連する書類です。
以下の例示以外にも発注書や納品書などがありますが、これら全ての書類はなんらかの取引の記録であり、相手があって書類が作成されるものとなります。
書類の作成者は自分又は相手先です。
-
契約書:
基本的に双方の印があり、商品の売買やサービス提供に関する内容を決めるもの
法律上は口頭でも契約は成立するため、書面がない場合もある -
請求書:
商品の売買などに伴い、相手に決済を依頼する書類
売り側が作成する場合は請求書、仕入側が作成する場合は仕入明細書となる -
領収書:
決済が完了したことを証する書類。レシートでも可
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事務作業を増やすことなく勤務可能となっていますので、ご興味ありましたら是非こちらをご参照ください!
整備士の方々へ
決算関連(仕訳帳、元帳、決算書など)
決算関連書類とは、副業や個人事業主、法人の所得を求めるために作成する書類や帳簿です。
申告方法によって作成する書類や帳簿は異なるため、まずは自身の申告方法を把握する必要があります。
(申告方法については、こちらのリンクをご参照ください。)
これらの書類はどこかから入手するものではなく、自身で作成しなければなりません。
会計ソフトを使っていれば自動生成してくれるのであまり気にしなくても良いですが、手作業で作成する場合は、作成漏れがないよう注意する必要があります。
-
仕訳帳:
会社の取引が全部載っている帳簿。仕訳帳の記入内容が元帳に集計される -
元帳:
勘定科目ごとの明細書。勘定科目ごとに作成が必要 -
決算書:
損益が把握できる損益計算書や収支内訳書
現金や借入金など、資産と負債が確認できる貸借対照表 など
確定申告関連(確定申告書、各種証明書)
確定申告関連とは、確定申告や還付申告のために作成した申告書、及び確定申告の各種控除のために必要な証明書のことを指します。
確定申告書は自分で作成するものです。
各種証明書は、証明書発行者から入手するものになります。
-
確定申告書:
所得税、住民税、消費税や法人税などの確定申告書、修正申告書など -
種証明書:
生命保険料控除証明書、寄付金受領証明書、医療費の領収書など
電子での帳簿保存義務について
業務関連、決算関連、確定申告関連と様々な書類がありますが、それら全ての書類は一定期間手元に保存しておく必要があります。
今までその保存方法として認められていたのは「紙原本での保存」です。
相手から紙で渡された書類はもちろん、メールなどで入手した各種書類は印刷して、保管しておけば問題ありませんでした。
しかし書類の保存方法として新たに「電子帳簿保存法」という法律が制定されました。
簡単に言ってしまえば、メール添付など電子的に入手した書類は必ず電子的に保存してね、というものです。
それらの書類については電子的に保存することが義務となるので、紙での保存は認められません。
電子帳簿等保存制度は内容が複雑なため理解しにくい部分はありますが、保存場所の確保や印刷コストという点においては従来の保管方法よりも優れています。
書類の保管を正しく行うため、内容を理解していきましょう。
ここでは理解しとかないといけない箇所について解説していきます。
電子帳簿保存の開始時期は?
電子での保存義務化は、実は既に始まっています。
R4年1月から施行されているものの、各所から準備不足の声が相次いだため2年間の猶予期間が設けられることとなりました。
よって完全義務化となるのはR6年1月からです。
R5年中に自身が保存すべき書類を整理して、R6年の開始に間に合うように準備していきましょう。
紙保存と電子保存について
電子帳簿等保存制度では、電子的に入手した書類については電子的に保存しなければなりませんが、書類全てを電子保存しなければならないという訳ではありません。
紙原本で入手した書類については、今まで通り紙の状態で保管することが可能です。
一方、紙の状態で保管しておきたくない、という場合にはその原本をPDF化して電子保存することも可能です。
重要なのはどの書類が電子的に入手していて、どの書類が紙で入手していているかを把握して、それぞれの保管方法について整理していくことです。。
これから解説していく流れに沿って、確認していきましょう。
自動車整備士の帳簿保管の流れ
R6年1月1日から本格的な義務化が開始される電子帳簿保存法ですが、義務化に対応していくためには書類の入手方法を把握することが大切です。
自動車整備士の皆様の確認方法について流れを解説していきます。
- どんな書類があるかを整理する
- 紙発行か電子発行かを確認する
- 電子発行の保管方法を決める
- 紙発行の保管方法を決める
- 事務処理規程を作成する
どんな書類があるかを整理する
まずは自身の業務について、どんな書類が発行されているかを整理しましょう。
前述した業務関連書類ですが、取引先によって例えば納品書がなかったり契約書がなかったりするかと思います。
自動車整備士の顧客は個人の場合も多々あるかと思いますが、その場合、全く書類がないこともあるかもしれません(基本的には、取引に関する書類がないのはNGです)。
この区分の書類の把握が一番手間取るかと思いますが、時間をかけて確認・整理していってください。
決算関連書類や確定申告書類を含め、全ての書類についてExcelに纏めるなどして一覧化しましょう。
取引先ごとに確認・整理すると後々楽です。
紙発行か電子発行かを確認する
どんな書類があるかを把握できたところで、それらの書類を電子発行のものと紙発行のものとに区分していく必要があります。
電子発行とは、紙が印刷されることなく電子的に受領又は自身で発行した書類のことです。
一方紙発行とは、紙の状態で受領又は自身が印刷や手書きで発行した書類のことです。
以下に例を記載しますので、参考にしてください。
<電子発行のもの>
- メールやSNSで受領した契約書など
- 取引内容が記載されているメール本文
- マイページで閲覧またはダウンロードした領収書など
- 会計ソフトで作成した帳簿や申告書など
<紙発行のもの>
- 手渡しや郵送された納品書など
- 店舗で受領したレシートや領収書など
- 手書きの帳簿や申告書など
電子発行の保管方法を決める
電子発行のものと紙発行のものを整理できたところで、それぞれの保管方法について検討していきましょう。
主な保管方法は以下となります。
①電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスに保管
②パソコンのファルダに保管
③会計ソフト上やマイページ上に保管
電子帳簿保存法では、書類の保管にあたって条件があり、その中の一つに「可視性の要件を満たすこと」という内容があります。
税務調査など必要時にすぐに見つけられるよう、検索性を重視して保管するというものです。
保管方法①の場合、電子帳簿保存法に対応したサービスとなりますので利用するだけで検索性は確保できます。
しかし多くはサービス利用料が有料です。
一方保管方法②の場合、サービス利用料はかかりません。
ですが検索性を確保するために手間をかける必要があります。
取引年月日、取引先名、取引金額をファイル名とする、またはExcelなどで一覧化して管理することです。
①と②はどちらも一長一短がありますので、自身が好む方法を選択してください。
なお保管方法③については、①と②と併用する形となります。
会計ソフト上で作成した帳簿や申告書、Amazonのマイページなどの購入履歴については、検索性が確保されています。
そのためわざわざPDF化してクラウドサービスなどに保管し直す必要はなく、それぞれの媒体において保管して構わないことになっています。
紙発行の保管方法を決める
紙発行の主な保管方法は以下となります。
①原本をそのまま保管する
②PDF化して電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスに保管
③PDF化してパソコンのファルダに保管
保管方法①について、電子的な保管同様、紙の原本保存についても検索性を確保する必要があります。
年月や科目ごとにノートに貼る、クリップ止めしてクリアファイルに入れるなど、必要に応じてすぐに取り出せる状態にしておくことが重要です。
保管方法②③については、上述の通りです。
事務処理規程を作成する
書類保管の条件として可視性の要件をご紹介しましたが、もう一つの条件として「真実性の要件を満たすこと」という内容があります。
電子上の書面は簡単に書き換え可能なため、書き換えが物理的にできない、または書き換えが規定上行いづらいように工夫すべしというものです。
真実性の要件は4つの項目からなり、その中の一つを選ぶ必要がありますが、その項目の一つに挙げられているのが「事務処理規程の作成」です。
規程の作成となると敬遠してしまうかもしれませんが、4つの項目のうち最も満たしやすいものとなります。
以下の通りサンプルも容易されていますので、自身の選択した保管方法に則った規程を作成してください。
【働き方別】自動車整備士の帳簿保管方法
電子帳簿保存法の概要や書類保管の流れについて見てきましたが、電子帳簿保存法自体がややこしいこともあり「結局どうすればいいのか?」と疑問にもたれた方もいるかと思います。
そこで自動車整備士の働き方別に、対応しやすい保管方法について解説していきます。
- 副業の場合
- 個人事業主・法人設立の場合
副業の場合
副業をしている自動車整備士の方々におすすめしたい保管方法は以下の通りです。
<電子発行>②と③の併用
②パソコンのファルダに保管
③会計ソフト上やマイページ上に保管
<紙発行>
①原本をそのまま保管する
(※前述した番号を引用)
副業している自動車整備士の場合、書類の種類や枚数が少なめです。
そのため専用のクラウドシステムを利用する必要はなく、パソコンのフォルダ保管で十分です。
また副業の場合は事業規模の小さい(売上1,000万円以下)ことが多いかと思いますが、検索性が確保されていなくても良いことになっています。
「必要な時にすぐに取り出せること」が検索性の目的ですが、規模が小さい場合は事前準備なしでも事業主自身がすぐに対応できる可能性が高く、手続きが簡素化されているためです。
よって副業している自動車整備士の場合、電子発行の書類はどんどんパソコンのフォルダに格納しましょう。
自身で内容が把握できていれば、ファイル名を統一しなくても問題になりません。
紙発行の書類については、わざわざPDF化するのは手間です。
また自動車整備士の場合は事務作業があまり発生しないため、PDF化に対応した事務機器が揃えていない方も多いかと思います。
紙発行の書類については、そのまま原本で保管することをおすすめします。
個人事業主・法人設立の場合
個人事業主及び法人を設立している自動車整備士の方々におすすめしたい保管方法は以下の通りです。
<電子発行>①と③の併用
①電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスに保管
③会計ソフト上やマイページ上に保管
<紙発行>
②PDF化して電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスに保管
(※前述した番号を引用)
個人事業主や法人設立の場合、書類の種類や枚数は膨大です。
自動車整備士の場合は外出していることが多く事務作業に時間を割きづらいため、ファイル名の変更が滞ってしまった結果、検索性の確保が困難になる可能性があります。
電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスを利用した方が確実です。
お使いの会計ソフトにクラウドサービスが無料で付随している場合もありますので、調べてみることをおすすめします。
量が少ない場合は紙原本保存でも構いませんが、量が多い場合は紙発行の書類もまとめてクラウドサービスに保管しましょう。
保管スペースを減らすことができ、書類の紛失リスクにも備えることが可能です。
まとめ
自動車整備士が業務上入手する書類について、その種類や整理の仕方、保管方法について解説してきました。
電子帳簿保存法は内容がややこしく理解が難しい部分はありますが、自動車整備士の皆様が副業する場合または独立する場合には、必ず守らなければならない法律です。
書類が紙発行であるか、電子発行であるかを区分していくところが重要なポイントとなりますので、解説した流れを参考に整理していって頂ければと思います。
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