セイビーには、自動車整備士の皆さんの働く選択肢を増やしたい、キャリアを広げていってほしい、という強い思いがあります。
「年収が低くて不満だけれど、会社員をやめる勇気はない。」
「副業に興味はあるけれど始めることに不安もある。」
「いずれ独立したいけれど、イメージが沸かない。」
長年培ってきた自動車整備士としての技術に自信があっても、どのように活かしたら収入に繋げられるかが分からないという理由から、独立や副業に二の足を踏んでいる方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?
またいずれは独立したいので働きながら資金を貯めて「効率的に情報収集をしたい」と思っていらっしゃる方もいるかと思います。
そこで今回は会社員である自動車整備士が副業を始める前の基礎知識についてまとめたので詳しく解説していきます。
目次
自動車整備士は今から副業を開始できる
個人事業主として独立する場合や法人設立して独立する場合と異なり、副業を開始するときに必要な手続きは一切ありません。
そのため自動車整備士が副業を始めたいと思ったその日から、副業を開始することができます。
副業を始めようと思ったときに「開業届はいらないの?」と考える方もいらっしゃるかと思いますが、開業届は不動産所得・山林所得・事業(農業)所得といった収入を予定している方が提出する書類です。
会社員である自動車整備士の方が副業する場合は「雑所得」となり、不動産所得・山林所得・事業(農業)所得ではないため、開業届の提出は必要ありません。
公式な手続きは一切ありませんが、勤務している会社によっては副業する場合、副業先の勤務表を提出するなどの所定の手続きが必要な場合があります。
その場合は社内規定に従って手続きをするようにしましょう。
<R4年10月27日追記>
副業においても条件を満たせば事業所得になりえる、というパブリックコメントが発表されました。
(参照:R4年10月7日 国税庁発表 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について)
副業収入が事業所得に該当する方は開業届をご提出ください。
副業収入には給与と報酬があることを知っておく
副業を始めた場合、その収入は給与となる場合と報酬となる場合があります。
どちらも働いた対価であることには変わりはありませんが、手続き上、自分の副業収入が給与となるか報酬となるか把握しておかなければなりません。
自動車整備士が始めた副業が「給与」か「報酬」かのどちらに該当するか知っておくことで、確定申告の際や社会保険の手続きの際に役に立つので参考にしてみてください。
副業収入が給与となる場合
給与であるか報酬であるかは判断が難しい部分ではありますが、一般的に雇用契約が締結される場合は給与と言われています。
また就業時間が決められていたり時給や日数に応じてお金が発生する場合は、給与であると判断される基準のひとつです。
代表的な例で言うと「コンビニのアルバイト」などは、シフトや時給が決まっているため報酬ではなく、給与として支払われます。
本来であれば雇用契約を締結すべき仕事であっても、しっかりと雇用契約を結んでいない状況で「報酬」か「給与」か分からない場合もあるかと思います。
その場合は、給与明細書が発行されているかどうかで判断してみてください。
一方「雇用契約も給与明細書もなく、副業収入が給与なのか報酬なのか分からない!」といった場合は副業先に聞いてみて、どちらに該当するかを確認すると良いでしょう。
(Seibiiでの副業は、報酬に該当します。)
副業収入が報酬となる場合
副業収入が報酬となる場合の判断は簡単で、給与となるもの以外は全て報酬に該当します。
代表的なもので言うと「ウーバーイーツなどの配達報酬、アフィリエイトなどの広告収入」などが報酬です。
明確な基準がある給与と報酬ですが、時給が決まっているアルバイトは「給与」で、ウーバーや広告収入などの収益は「報酬」と考えるのが分かりやすいと思います。
副業で稼いだら必ず確定申告する
会社員であることのメリットは、めんどくさい手続きを会社が全部やってくれることです。
「所得税?住民税?社会保険?なにそれ?」となっていても問題もなく過ごせて、難しい手続きは会社が勝手に終わらせてくれます。
一方副業収入の場合は誰かがやってくれる訳ではないので、自分で稼いだ金額を元に所得税の手続きをする必要があります。
その所得税の手続きが「確定申告」です。
副業収入が給与の場合と報酬の場合で考え方が違うため、それぞれの手続き方法などについて詳しく解説していきます。
副業収入が給与となる場合の確定申告
会社員として給与をもらっている分については、毎年12月頃に年末調整を行っているかと思います。
毎月の給与で天引きされている所得税は”おおよそ”の金額であるため、年の最後に正しい税額に計算しなおす必要があり、その作業を年末調整と呼びます。
一方で副業として給与をもらう場合、副業先では年末調整されません。
そのため副業先から支払われる給与は、毎月”おおよそ”の所得税が天引きされたままになっています。
収入が給与となる副業を始める自動車整備士が、
- 年末調整され所得税が正しく計算されている給与(本業)
- 所得税が正しく計算されていない給与(副業)
この2つの給与について、正しく所得税の計算をする作業が確定申告です。
2つの給与を合算して確定申告した結果、追加で所得税を払う場合もありますが、所得税が還付されるラッキー!な場合もあります。
忘れずに確定申告してください。
副業収入が報酬となる場合の確定申告
会社員として給料をもらっている分については、先ほどと同様に年末調整されています。
一方で副業で報酬を得た場合、所得税が差し引かれている場合と差し引かれていない場合があり、それぞれで少しだけ考え方が異なります。
それぞれ場合分けすると以下となります。
- 報酬から所得税が差し引かれている場合
- 報酬から所得税が差し引かれていない場合
報酬から所得税が差し引かれている場合
報酬の内容がブログのライターなどの原稿料や講演料だった場合、副業先によっては10.21%の所得税が報酬支払の際に差し引かれ、納税されています。
副業収入が給与となる場合は”おおよそ”の金額が差し引かれていると解説しましたが、報酬だった時の所得税率は10.21%で固定です。
収入が報酬となる副業を始める自動車整備士が、
- 年末調整され所得税が正しく計算されている給与(本業)
- 10.21%の所得税が既に差し引かれている報酬(副業)
この2つの収入について正しく所得税の計算をする作業が確定申告です。
所得税は収入が多くなれば多くなるほど税率があがる(税率は5%~45%)、累進課税という制度をとっていますが、本来税率10%以下となる人にとっては、10.21%は納税しすぎです。
確定申告すれば納めすぎた所得税が戻ってくる可能性が高いので、忘れずに確定申告をしてください。
報酬から所得税が差し引かれていない場合
副業している報酬の内容が、原稿料や講演料以外の場合は所得税は差し引かれません。
ウーバーイーツなどの配達報酬や自動車整備の副業収入の多くは、所得税は天引きされない形で全額支払いされます。
収入が報酬となる副業を始める自動車整備士が、
- 年末調整され所得税が正しく計算されている給与(本業)
- 所得税を全く払っていない報酬(副業)
この2つの収入について正しく所得税の計算をする作業が確定申告です。
報酬分について所得税を全く払っていないため、この2つの収入について確定申告した場合、残念ながらほぼ確実に追加で納税することになります。
「所得税を払うなら確定申告したくない!」と思う気持ちは分かりますが、副業を始めた場合は確定申告をしないと税務調査の対象となる可能性もあるため、しっかりと確定申告をするようにしましょう。
また「報酬の所得金額が20万円以下の場合は確定申告が必要ない」とご存知の方もいるかと思います。
実際にその通りではありますが「副業収入が20万円以下だから確定申告が必要無い!」という認識だと正しい税務手続きが出来てない可能性があります。
そのためまずは1円でも報酬を得たら確定申告を行い、確定申告に慣れた時点でこの20万円以下のルールが自分に当てはまるかどうかを確認していくことがおすすめです。
副業を初めても社会保険の手続きは必要ない
自動車整備士が副業を始めた場合に、その収入に対して社会保険の手続きは必要ありません。
以下に「会社員収入・月給30万円の方」の例を出していますが、お金を稼いだ時に負担すべきものは大きく分けると2つ、社会保険と税金(所得税・住民税)があります。
例)月額 30万円の方の場合
社会保険料:44,625円
所得税:6,750円
住民税:8,000円
計:59,375円
(参照:協会けんぽ 東京 令和4年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表)
(参照:国税庁 令和4年 源泉徴収税額表)
※住民税は概算
上記の中にある所得税は「総収入に対し税金計算する仕組み」となっているため、副業を始めた場合は正しい税額となるように自分で確定申告をしなければなりませんでした。
ですが社会保険については、総収入に対して負担金額を計算する仕組みになっていません。
そのため既に会社員として社会保険料を払っている場合は、副業分について追加で払う必要はないため、自分で手続きする必要はないのです。
ただ副業収入が給与となる場合、手続きが必要となる可能性もあります。
しかしそれは副業の労働時間が週20時間以上といった条件を満たした場合のみとなり、会社員である自動車整備士の方がその条件を満たすことは珍しいです。
また副業収入が報酬となる場合は就業時間などは関係なく、手続きをする必要はありません。
よって会社員である自動車整備士の方が副業する場合、社会保険の手続きは必要ないでしょう。
自動車整備士が副業を隠すなら住民税を工夫する
自動車整備士が副業を始めようと思ったときに「副業していることが周りに知られては困る」と考える方もいらっしゃるかと思います。
副業禁止の会社に勤めている場合や収入の面など周りにバレたくない人がほとんどでしょう。
副業を始めた時に周りの人に知られる主な要因として、
- 勤務態度(眠そう・疲れている・集中していないなど)
- 噂話(副業を見られた・知り合いから広まったなど)
- 税務的な証拠(住民税の負担額に違和感)
がありますが、税務的な証拠については自分でコントロールすることができます。
そのコントロール方法とは、「副業分の住民税を自分で納付する」ことです。
副業分の住民税を自分で納付する方法に関し、仕組みや対応策、注意点についてまとめましたので参考にしてください。
住民税額によって副業がバレる仕組み
会社員の場合、住民税は給与から天引きされていることがほとんどです。
会社は天引きした給与を適切な場所へ納付していますが、その住民税は従業員が住んでいる市区町村から送られてきた”住民税決定通知書”という書面に基づいて天引き、納付しています。
住民税の金額は所得税の確定申告書をもとに計算されているため、年収が同じであるからといって同じ金額になるとは限りません。
ですが同じ年収で住民税額に大きな差がある場合は、会社の給与計算担当者が不審に思う場合があります。
例えば会社の給与計算担当者が住民税決定通知書を受け取った際に
- Aさん(月額30万円の給与) 住民税額 月1万円
- Bさん(月額30万円の給与) 住民税額 月2万円
上記のようになっていたら違和感を感じてしまいますよね?
その段階で給与を計算している担当者が副業をしていることに、気づいてしまうことがあります。
副業がバレないようにする対応策
副業分の住民税を会社が納付する場合、副業がバレてしまう可能性があります。
そうならないため自動車整備士で副業をしている人は、副業分の住民税額を自分に通知してもらい「自分で納付する」という方法をとることが必要です。
「自分に通知してもらい自分で納付する」という方法を選択すると、会社には支払った給与分の住民税額のみが通知され、副業分の住民税額は通知されないので副業がバレるリスクを減らすことができます。
住民税を自分で納付しようとする際の注意点
「自分に通知してもらい自分で納付する」という方法は万能なように感じるかとおもいますが、残念ながらこの方法をとることができるのは副業収入が報酬の場合のみです。
副業収入が給与の場合は、住民税の通知を分けてもらうことができませんので、会社に副業分の住民税額の通知がいくことになります。
また副業収入が報酬の場合であっても、市区町村によって対応が異なるため、通知を分けてくれる地域と、分けてくれない地域があるようです。
「住民税を自分で納付しよう!」という方は、お住まいの地域の地区町村に問い合わせてみてください。
自動車整備士が副業を始める前の基礎知識まとめ
今回は、自動車整備士が副業を始める前に知っておきたいことについて詳しく解説させていただきました。
自動車整備士が副業を始めたタイミングで難しいと感じる手続きは確定申告くらいなので、思ったよりも副業のハードルは下がったのではないでしょうか?
22年7月に厚生労働省は企業に対し、従業員に副業を認める条件を公表するよう依頼しました。
会社が従業員に副業を認めない場合は、その理由も含めて従業員に開示する必要があり、副業促進の動きは日本全体でますます高まっています。
今回の記事が、自動車整備士で副業を開始するかどうか悩んでいる方々のお役に立てたら幸いです。
Seibiiの出張整備は自動車整備士としてのスキルを活かせて、面談など終わればすぐに始めやすいというメリットがありますので、詳細に知りたい方は下記のページから確認してみましょう!
(この記事は、2022年10月時点の法令等に基づいて作成されています。)