12月18日深夜2時、ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入ったと発表されました。
統合は持ち株会社を設立し、その傘下に両社が入る形を想定しており、近く覚書(MOU)を結ぶ見通しです。
今後は、統合比率など具体的な検討を行うとしています。
また、日産が株式を34%保有する三菱自動車も、この新たなホンダ・日産連合に合流する方針を固めています。
目次
今年8月に行われたホンダ・日産の協業記者会見
協業の概要
今年3月、両社は車の電動化をはじめとした包括的な協業に向け、覚書を結びました。
そして8月には、ホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長が都内で共同記者会見を実施。
その場で、次世代車に不可欠となるソフトウェアの基礎技術の共同研究や、EVの主要部品の共通化を進める方針を発表しました。
さらに、三菱自動車工業が新たにこの枠組みに参画することも明らかにされています。
協業の狙い
- ソフトウェア開発への対応強化
アメリカのテスラや中国のBYDなど、新興勢力が車のソフトウェア開発で先行している現状を踏まえ、ホンダ・日産両社が連携することで開発力を強化する狙いがあります。
車のソフトウェアは機能アップデートを繰り返しながら長期的に性能を高めることが求められ、巨額の開発費も必要となるため、両社が共同研究するメリットは大きいと見られます。
- EVの主要部品の共通化
両社はEVのバッテリー仕様の共通化や相互供給、そして「イーアクスル」と呼ばれる駆動系ユニットなどの主要部品の共通化を検討。
大幅なコスト削減と開発スピードの向上を図り、EV市場での競争力を高めることが目的とされています。
両社トップのコメント
- ホンダ・三部敏宏社長
「両社の技術を持ち寄って、先行する新興メーカーをいち早く捉えてリードする形に持って行きたい。両社でやることでスケールメリットや開発費の効率化も生まれる。
新しい知能化・電動化で世界をリードできる力を付けることが最も重要だ」とのこと。
- 日産・内田誠社長
「車の価値が大きく変わる時代が近い将来に来る。その変化に対していかに競争力を作れるかが鍵。危機感を共有しながら技術の底上げを図り、競合他社に対抗していける業態を作らなければならない」と語っていた。
国内3社統合の狙いや背景
日産の苦境
日産は、中国と米国での販売台数が落ち込み、新車開発の遅れも目立っています。
特に米国ではハイブリッド車(HV)の需要が高まっているにもかかわらず、投入が遅れたことが響いています。
悲願だった仏ルノーとの資本関係の見直しに2023年にこぎつけたものの、グローバルでのスケールメリットが薄れ、コスト削減効果も限定的でした。
さらに経営不振から、11月には世界の生産能力を20%削減し、全体の1割弱に当たる9000人規模の人員削減を発表。リストラが急務となっていたことも、今回の統合推進の大きな背景とみられます。
テスラや中国メーカーに対抗
ホンダは独自のハイブリッド技術、日産は世界初の量産EV「リーフ」で先行した実績があります。
しかし、世界市場でEV化が進む中、個別の戦いではスケールとスピードが不十分です。
そこで両社が手を組むことで世界3位クラスの規模を確保し、EV時代の覇権争いに挑もうとしていると考えられます。
一方、中国市場ではBYDなどが価格・技術両面で存在感を高め、ホンダ・日産いずれも販売不振に陥っているのが現状です。2024年1〜11月期の販売台数はホンダが前年同期比30.7%減、日産が10.5%減と大きく落ち込んでいます。
シナジー効果
両社は車載ソフトウェアやEVの基幹部品を共通化し、バッテリー供給体制を強化することで、コスト削減と開発スピードの向上を図る見通しです。
ホンダが積極的に進めてきた巨額の電池投資は、日産への供給を通じてより高い効率性を得ることが期待されます。両社が協力することで、EV市場でのプレゼンス向上を目指す動きです。
国内自動車メーカーの再編の流れ
今回のホンダと日産の統合は、日本の自動車産業再編の歴史の大きな1シーンと言えます。過去10年にも、以下のような動きがありました。
時期 | 動き |
---|---|
2016年10月 | 日産が三菱自動車の34%の株式取得 |
2017年8月 | トヨタとマツダが業務資本提携 |
2019年8月 | トヨタとスズキが資本提携 |
2020年2月 | SUBARUがトヨタの持ち分法適用会社に |
2023年7月 | 日産とルノーが資本関係の見直しで最終契約 |
こうした再編の波を経て、ついにホンダと日産の統合が動き出したわけです。
世界3位グループへの浮上
ホンダ・日産・三菱自動車の3社が統合すれば、販売台数は800万台を超えると見込まれています。
これはトヨタグループ、フォルクスワーゲングループ(VW)に次ぐ世界3位の規模に相当します。
現状、ホンダは世界7位、日産は8位ですが、今回の統合によって一気にトップ3の座に躍り出ることになります。
順位 | グループ | 販売台数(万台) |
---|---|---|
1 | トヨタグループ | 1,123 |
2 | VWグループ | 923 |
3 | 現代・起亜 | 730 | 4 | ステランティス | 639 |
5 | GM | 618 |
6 | フォード | 441 |
7 | ホンダ | 398 |
8 | 日産 | 337 |
9 | スズキ | 307 |
10 | BYD | 302 |
統合に伴う課題・リスクと業界へのインパクト
- 企業文化・ブランド統合
ホンダと日産の企業文化、意思決定プロセスやブランド戦略のすり合わせが必要となり、再編の初期段階で混乱が生じる可能性があります。
- 市場や消費者への影響
再編によって、製品ラインアップの整理や新モデル開発の方向性が変わるかもしれません。消費者からの期待も高まる一方、ブランドのアイデンティティをどこまで残すのか、舵取りが難しい局面も想定されます。
- 新たな車への期待
EVやソフトウェアの共同開発が加速することで、新しい機能やサービスを備えた次世代車が登場する可能性があります。日本の自動車産業全体の技術力向上や海外勢との競争力強化にも寄与すると期待されています。
まとめと今後の注目ポイント
今回のホンダと日産の統合交渉は、日本の自動車産業が世界市場で生き残りを図る上での大きな賭けといえます。
三菱自動車を含む3社統合の動きによって、世界3位グループの誕生が現実味を帯び、技術開発やEV戦略でどのようなシナジーが生まれるのか、今後の展開に注目が集まります。
また、両社が手を組むことで消費者に届けられる新しいクルマの姿にも期待が高まっています。
日本国内外での競合が一段と激しさを増す中、今回の統合による効果がどれほどのインパクトをもたらすのか、引き続き最新情報を追っていきたいところです。
セイビーとしても今後の動向を注視し、新たな情報が入り次第お知らせしてまいります。