車には安全に走行するために使用者に義務付けられた「法定点検」と、
法律に定められた保安基準に満たしているか検査する「車検(正式名:自動車継続検査)」があります。
どちらも法律で定められた内容ですが、車検は実施しないと罰則があり、法定点検は実施しなくても罰則がありません。
そのため罰則においてこの2つには大きな違いがあります。
ただ車検と法定点検は実施する期間が重なっていたり、項目が似ていたりするため分からなくなってしまいますよね。
そこで今回は法定点検の基礎的な知識と、車検との違いについて詳しく解説していきます。
法定点検とは
車の法定点検とは、車両の安全性や公共道路の安全を確保するために、法律で義務付けられた定期的な点検です。
車両の使用者は、法定点検を定められた期間ごとに受けることが義務付けられており、定期的に法定点検を実施する必要があります。
法定点検をしないとどうなる?
法定点検は使用者の義務ですが、実施しないことによる罰則はありません。
ただ法定点検をしないと車両の安全性が損なわれてしまうことになり、気づかない内にブレーキの残量が少なくなっていてブレーキが効かなくなってしまう等の車両トラブルが起きる可能性があります。
法定点検を実施することでブレーキ残量やオイルなどの液量および漏れていないかなど確認できるので、予防整備とも言われています。
法定点検の種類
法定点検は日常利用する自家用車であれば、下記の2種類があります。
- 法定12ヶ月点検
- 法定24ヶ月点検
新車購入から1年毎や車検実施から1年後に実施するのが「法定12ヶ月点検」で
車検取得と同じタイミングで実施するのが「法定24ヶ月点検」です。
詳しくは後述しますが、法定12ヶ月点検と法定24カ月点検は点検項目数が違います。
法定12ヶ月点検では27項目、法定24ヶ月では57項目を点検します。
またディーラーのメンテナンスパック等にある6ヶ月点検や、新車購入から1ヶ月後に実施する点検は定期点検と呼ばれており、法定点検とは異なります。
法定点検の実施時期
法定点検の実施時期は車両や使用用途によって異なりますが、通勤や通学・レジャー用途など日常利用する自家用乗用車であれば、12ヶ月毎に実施する必要があります。
前回実施した法定点検から12ヶ月後が点検実施月となっており、基本的には車検取得の際に法定点検を実施するので車検取得日から1年経ったら実施すると良いでしょう。
法定点検と車検の違い
実施するタイミングが重なっていることもあり混同してしまうこともありますが、法定点検と車検では点検項目も制度も異なります。
法定点検は車両に安全上の問題がないかを確認するための「点検」ですが、車検は安全面や環境面の基準に達しているかを確認する「検査」です。
法定点検は法律で使用者に義務付けられた点検で、車検は「自動車検査登録制度」といい、車が保安基準を満たしているかを検査する制度になっています。
法定点検の期限切れに罰則はありませんが、車検有効期限切れで走行した場合は違反点数が課せられたり罰金が発生します。
「罰則があるから車検取得する」「罰則がないから点検しない」というわけでなく、車の安全面を考えると車検も法定点検もどちらも実施することが重要です。
法定点検と車検のステッカーの違い
法定点検と車検には実施の有無や期日を記載したステッカーがそれぞれ存在します。
法定点検の実施有無や期日を記載したステッカーは「点検整備済みステッカー(通称:ダイヤルステッカー)」と呼び、
車検の有効期限を記載したステッカーは「検査標章(通称:車検ステッカー・シール)」と呼びます。
ダイヤルステッカーはフロントガラスの左上に貼り付けられており、ステッカーの裏側には下記が記載されています。
- 定期点検整備を実施した日
- 定期点検整備を行った工場
- 認証番号(認証を受けた工場の番号)
- 事業場名
- 次回定期点検整備の実施時期
車検ステッカーには「自動車検査証の有効期間の満了する日」が記載されており、令和5年からはフロントガラスの右側に貼られています。
どちらも期日が記載されているので間違いやすいですが、ダイヤルステッカーは丸く、車検ステッカーは四角いのでどちらの期日か間違えないようにしましょう。
ステッカーを貼らないとだめ?剥がすとどうなる?
ダイヤルステッカーと車検ステッカーは期日が過ぎてない限りは貼り付けておく必要があります。
ただ前述の通り、法定点検は使用者が実施する「義務」ですが、ステッカーは貼り付けて無くても、剥がしてしまっても罰則はありません。
逆に車検時に点検期日が過ぎたダイヤルステッカーが貼ってあると車検取得が出来ないので、ユーザー車検等で車検取得する場合は注意が必要です。
法定点検項目と車検の検査項目
法定点検の点検項目は「道路運送車両法第48条」で定められており、点検項目は実施する法定点検の種類によって異なります。
一方、車検の検査項目は「自動車検査制度の保安基準」で定められていて、車両の検査だけでなく車検証と車両が同じ車両かの確認もします。
点検項目と検査項目では異なるので、ここでは下記の3つに分けて紹介します。
- 法定12ヶ月点検
- 法定24ヶ月点検
- 車検
点検の内容と検査の内容についても詳しく解説していくので参考にしてください。
法定12ヶ月点検の点検項目
法定12ヶ月点検では27項目が点検項目として定められており、大きく分けると下記の4つ点検を実施します。
- 室内点検
- エンジンルーム
- 下回り点検
- 外回り・足回り
上記の4つを詳しく解説していきます。
室内点検
室内点検ではブレーキペダルの踏み込み時のスキマやブレーキの効き具合を確認します。
またパーキングブレーキも同様に確認して、クラッチペダルがある場合はそちらも点検します。
エンジンルーム
エンジンルームの点検では、ベルト類の緩みチェックやスパークプラグの状態・バッテリーの緩みの点検を実施します。
下回り点検
下回りの点検ではオイル類の漏れやマフラーの状態などを点検します。
外回り・足回り
外回り・足回りの点検ではブレーキの摩耗状態やタイヤの空気圧やホイールナットの緩みを点検します。
法定24ヶ月点検の点検項目
法定24ヶ月点検では57項目が点検項目として定められており、12ヶ月点検の項目に30項目が追加となっております。
法定12ヶ月点検で実施した車両の基本的な安全性や機能性の点検に加えて、
排気ガス回りや燃料システム、ハンドル・サスペンションなどより高度な内容の点検が行われます。
基本的には車検と同時やその前後に実施する点検ですが、法定12ヶ月点検より詳細な内容の点検を実施するため、より車両の安全性を確認できる点検内容になっています。
車検の検査項目
車検の検査項目は法律の定める保安基準によって決まっています。
車検では大きく分けて下記の8つの項目を検査します。
- 同一性の確認
- 外回り
- サイドスリップ
- ブレーキ
- スピードメーター
- ヘッドライト
- 排気ガス
- 下回り(足回り)
ここではそれぞれ詳しく解説していきます。
同一性の確認
同一性の確認では車検証の記載と実際の車両が同じかを下記の項目で確認します。
- 車体番号
- 原動機
- ナンバープレート
- ナンバープレートの封印
- 車体の形状・種別
外回り
外回りの検査ではライトが点灯しているかや、ボディー部品に大きな破損がないかを下記の項目で確認します。
- 灯火類
- 走行装置
- 車内
- ボディー
サイドスリップ
サイドスリップの検査では、ハンドルが真っすぐの状態での横滑り量を確認します。
ブレーキ
ブレーキ検査は制動力を検査する項目です。
制動力テスターで測った制動力を車両重量で除した値が基準値以上であれば合格となります。
検査する項目は下記の4つです。
- 4輪の制動力の合計値
- 後輪の制動力の合計値
- パーキングブレーキの制動力
- 左右の制動力の差
スピードメーター
スピードメーターの検査とは、メーターの速度とタイヤの実速の誤差を検査する項目です。
ヘッドライト
ヘッドライトの検査項目はヘッドライトテスターを使用して、ヘッドライトの光軸と高度を測定します。
排気ガス
排気ガス検査では、排気ガスに含まれるCOとHCの濃度を測定します。
この検査項目は車両が環境面で問題ないかを確認しています。
下回り(足回り)
下回り(足回り)の検査では、タイヤの緩みがないかや足回りの部品にガタなどがないかを検査します。
車検や法定点検は自分でも実施できる?
車検も法定点検もどちらも自分で実施することは可能です。
ただ車検ではユーザー車検という形で必要書類を用意して陸運局で実施する必要があります。
また法定点検に関しても自分で実施して記録簿を書くことは問題ないですが、条件を満たす工場で点検を実施したことを示すダイヤルステッカーを張り付けることは出来ません。
令和3年10月からの法定点検では診断機を使用した診断項目も追加となっているため、専門的な知識や設備がないと難しいでしょう。
そのためDIYで車検・法定点検をするのが不安な場合はディーラーや整備工場に依頼するのがオススメです。
法定点検を実施する3つのメリット
法定点検には罰則がないので「実施しなくても問題ない」と思う人もいるかと思います。
ですが法定点検を実施する大きなメリットが3つあります。
そこで、ここでは法定点検を実施するメリット3つを解説していきます。
メリット1:将来の故障などのトラブルを防げる
法定点検は予防整備とも言われており、定期的に点検を受けることで車両の安全性が担保できます。
また故障の前兆があった場合でも早期に発見することができるので、出先などでトラブルを起こす前に修理することができ、将来的な大きな故障やトラブルを防ぐことが可能です。
メリット2:安心して快適に走行できる
法定点検を受けることで、車両の安全性や性能が確認されます。
安心して快適に車を運転することができるため、ストレスなくドライブを楽しむことができます。
メリット3:売却時に高い評価を受けることがある
定期的に法定点検を受けている車両は、整備が適切に行われているという証明になります。
また法定点検では点検記録簿も発行されて車検証入れに保管されているため、過去の点検記録を売却時に確認してもらえれば高い評価を受けることがあるのです。
ディーラーのメンテナンスパック等も法定点検とは別に定期点検を実施しているため、売却時にはメーカー認定車として高い査定額が出る可能性があります。
まとめ
今回の記事では車検と法定点検の違いや、点検項目の詳細を解説しました。
車検と法定点検では下記のような違いがあります。
- 法定点検は車両に安全上のトラブルがないかを確認するための「点検」
- 車検は安全面や環境面の基準に達しているかを確認する「検査」
法定点検の期限切れに罰則はありませんが、車検有効期限切れで走行した場合は違反点数が課せられたり罰金が発生します。
制度が異なる車検と法定点検ですが、どちらも車を乗るうえでは必要なのでしっかり実施するようにしましょう。