4月に発令された緊急事態宣言が、新型コロナ感染者数の減少と共に、解除された5月。少しずつ外出が回復してきた月となりました。5月全体としては、4月に引き続き「外出自粛」「三密回避」「都道府県を跨ぐ移動の自粛」による「マイカー利用率」「近距離走行」の増加が数字に現れた月でした。JAFが公開する「ロードサービス救援統計」、カー用品販売最大手のオートバックスが公開する「月次売上速報」と共に、車の整備・修理業界2020年5月の概況に関し纏めました。
目次
2020年5月:新車販売ランキング
- N-BOX(ホンダ) - 11,655台
- ヤリス(トヨタ) - 10,388台
- ライズ(トヨタ) - 7,916台
- フィット(ホンダ) - 7,235台
- カローラ(トヨタ) - 6,540台
2020年5月クルマの整備・修理・アフターパーツ業界概況
新型コロナ(COVID-19)による緊急事態宣言が解除された5月
2020年4月7日に発令された緊急事態宣言が2020年5月25日に解除されました。外出自粛は、それより前に徐々に緩和され、外出される方が少しずつ増えてきた月となりました。
都道府県を跨ぐ移動自粛により「ロングドライブ」が減少
JAFの4月、5月の統計、オートバックス4月、5月の速報から、緊急事態宣言に基づく外出自粛・都道府県を跨ぐ移動の自粛により、道路を走る車の総量・走行距離(ロングドライブ)が減ったことが読み取れます。
3密回避の為の「マイカー利用」と「近距離走行」が増加
4月同様に、着目すべき点は、「車のバッテリー」に関連するロードサービス救援・バッテリー販売量が増加していることです。三密を回避する為に、日常的なマイカー利用が増え、且つ、短距離走行が増加したことが推定されます。
車検売上は減少し、リペア・軽整備需要は増加
緊急事態宣言を発端に、国土交通省から複数回にわたり、車検満了日の延長措置が発表されています。また、ディーラー含む店舗型で事業を行う整備・修理事業者の多くが、営業時間の短縮等を実施しています。従い、車検・整備関連の売上が、4月に引き続き減少しました。
また、オートバックスの月報によると「巣篭り需要として洗車やキズ補修の需要が拡大。金額・数量ともに前年越え」との記載があり、興味深い変化と言えます。日頃忙しかった方々の在宅勤務が増えた結果、後回しにしていたマイカーのリペアに時間を割いた、と言えるでしょう。これは4月に引き続きの傾向です。
総救援出動(ロードサービス実施)件数
2020年5月の総救援件数は、前年比で減少、前月比で増加しました。
全国JAF総救援出動件数:147,899件
- 前月(2020年4月)比:+ 1.48%
- 昨年(2019年5月)比:▲ 7.51%
件数前提
- JAF救援実施件数(一般道路・四輪自動車)
- JAFの救援シェアは約50%ですので、日本全国では約2倍の出動要請があったと考えられます
バッテリー上がり(過放電)件数
総救援件数が3ヶ月連続で前年比割れとなった一方で、「バッテリー上がり」の件数は3ヶ月連続で増加となりました。特に、前年同月比プラス16.51%と大幅増加しました。新型コロナの影響で、車を久しぶりに利用する方が増えた社会情勢を反映していると考えられます。
全国バッテリー上がり件数:62,792件
- 前月(2020年4月)比:+3.17%
- 前年(2019年5月)比:+16.51%
件数前提
- JAF救援実施件数(一般道路・四輪自動車)
- JAFの救援シェアは約50%ですので、日本全国では約2倍の出動要請があったと考えられます
バッテリーの劣化・破損(要バッテリー交換)
バッテリー上がりと同様に、昨年比での大幅需要増が4ヶ月連続継続しています。久しぶりに車を動かそうとした人が増えたことが背景にあるでしょう。
全国バッテリ−劣化・破損件数:9,205件
- 先月(2020年4月)比:▲6.72%
- 前年(2019年5月)比:+23.56%
オートバックスのバッテリー販売売上
販売好調であった3年前の新車のバッテリーが交換サイクルを迎えていること、アイドリングストップ車用バッテリーが好調なことから、前年比 + 14.2%(金額ベース)となっています。
- (参考)2020年3月期(2019年4月-2020年3月)のバッテリー売上:95億82百万円
件数前提
- JAF救援実施件数(一般道路・四輪自動車)
- JAFの救援シェアは約50%ですので、日本全国では約2倍の出動要請があったと考えられます
タイヤのパンク・バースト・エア不足
タイヤのトラブルは、前年比、昨年比共に大きく件数を下げました。バッテリー上がり・交換とは逆の傾向が出ており、3ヶ月連続で前年比減少となっています。新型コロナの影響で、走行距離が短くなった(都道府県を超えた移動が激減した)ことが原因と推察されます。
全国のタイヤのパンク・バースト件数:24,910件
- 先月(2020年4月)比:+1.18%
- 前年(2019年5月)比:▲19.05%
件数前提
- JAF救援実施件数(一般道路・四輪自動車)
- JAFの救援シェアは約50%ですので、日本全国では約2倍の出動要請があったと考えられます
オルタネーター・ダイナモ故障
エンジンがかからない主要原因の1つであるオルタネーター(発電機)の故障。前月比では増加しましたが、昨年比では減少しました。尚、オルタネータ・ダイナモ故障は4月を底に、夏に向けて件数が増加していきます。従い、例年通りの傾向となっています。
全国のオルタネーター・ダイナモ故障件数:1,897件
- 前月(2020年4月)比:+13.05%
- 前年(2019年5月)比:▲22.19%
件数前提
- JAF救援実施件数(一般道路・四輪自動車)
- JAFの救援シェアは約50%ですので、日本全国では約2倍の出動要請があったと考えられます
スターター・セルモーター故障
オルタネーター・ダイナモと並び、エンジンがかからない際の主要原因の1つです。オルタネーター・ダイナモと同様に、前月比では増加しましたが、昨年比では減少しました。スターター・セルモーター故障は、4月を底に夏に向けて件数が増加していきます。従い、例年通りの傾向が見られます。
全国のスターター・セルモーター故障件数:1,726件
- 前月(2020年4月)比 : + 8.55%
- 前年(2019年5月)比 : ▲19.19%
件数前提
- JAF救援実施件数(一般道路・四輪自動車)
- JAFの救援シェアは約50%ですので、日本全国では約2倍の出動要請があったと考えられます
スパークプラグ故障件数推移
エンジンが掛からない際の主因の1つです。スパークプラグと合わせてイグニッションコイルが故障しているケースも多いです。
2020年5月の件数の開示はありませんでした。例年、冬場になると数が増える故障です。
全国スパークプラグ故障故障件数:N/A
- 前月(2020年3月)比 : N/A
- 前年(2019年4月)比 : N/A
件数前提
- JAF救援実施件数(一般道路・四輪自動車)
- JAFの救援シェアは約50%ですので、日本全国では約2倍の出動要請があったと考えられます
カー用品・アフターパーツ等販売状況
オートバックスの月次速報を元に、各商品の販売状況を見ていきます。
タイヤ・ホイール販売状況
- ロングドライブ自粛の影響、降雪地域での夏タイヤへの履き替え需要の減少などにより、数量・金額ともに前年割れ
- 前年比:▲11%(金額ベース)
ドライブレコーダー・カーナビ等カーエレクトロニクス販売状況
- 先月に続き車販売不振によりナビゲーション、ドライブレコーダーが低調。
- スピーカーは二桁伸張。
- 前年比:▲27.0%(金額ベース)
エンジンオイル販売・交換状況
- 前年比▲6.8%(金額ベース)
前提
- オートバックスの店舗売上
参照サイト
この記事は以下2つの情報を基に作成しています。この場を借りて、情報公開に感謝申し上げます。
- JAF:ロードサービス救援データ
- 株式会社オートバックスセブン:2021年3月期5月度月次売上概況(速報)についてのお知らせ