日本の中古車小売市場は約3兆7,000億円ともいわれる巨大な市場です。「買取」や「業者間売買(オークション)」を含めると10兆円近くの市場と推定されます。車齢長期化や個人間売買の増加により、ますます存在感を増すことが予測される中古車市場。この記事では、日本に於ける中古車市場の今と未来について考察してみたいと思います。
市場規模と推移
まずは市場規模から見ていきましょう。
自動車アフターマーケット全体の市場規模 : 20兆円
新車が販売されて以降の市場を「自動車アフターマーケット」と呼びます。全体で約20兆円の巨大な産業で、「中古車」「カー用品」「整備・修理」「自動車保険」など様々なセグメントで構成されています。
ちなみに、日本で1番大きな産業は、自動車(新車)・部品製造業で約68兆円、2番目は市場規模56兆円の建設業です。
中古車市場の構造・バリューチェーン
さて、その自動車アフターマーケットの中を構成する1つが中古車市場ですが、一般的に、中古車の流通・市場構造は以下の通りとなっています。
- 消費者Aが買取店Bに売却
- 買取店Bが「業者間中古車オークション」を通して中古車販売店Cに販売
- 中古車販売店Cが消費者Dに車両を販売
中古車「小売」の市場規模 : 3.7兆円
上記の3が中古車「小売」市場で、約3兆7,000億円のマーケットです。計算式は「小売台数 320万台 x 販売単価115万円」です。
中古車市場(全体)は10兆円近く?
3.7兆円という数値は、業者から消費者への販売、すなわち「小売」の市場規模です。これに上記で解説した「業者による消費者からの買取」「業者間売買(オークション)」を加えると、中古車市場全体で10兆円近く(3.7兆 x 3弱)あることが想像できます。
中古車市場の過去推移
後述の「中古車登録台数」を元に振り返ります。
- 1997年まで : 増加
- 1997 - 2008年 : 下落
- 2009以降 : 横ばい
長期で見ると、1997年がピーク、そこから下落し、2009年以降横ばいが継続しています。
出所:市場規模マップ
中古車の販売台数(2018年)
日本では、どのくらいの中古車が小売販売されているのでしょうか。分かりやすく新車販売台数と比較すると以下の通りとなります。
- 新車販売台数 : 約500万台/年間
- 中古車小売販売台数 : 約320万台/年間 (※小売 = 個人等カーオーナー向けの販売台数)
公式統計を解説
「中古車(小売)販売台数」に関する正式な統計は存在しません。統計データとして公表されているのは「中古車登録台数」とその内数である「中古車新規登録数」「移転登録数」「変更登録数」のみです。
- 中古車登録台数 : 約680万台(2018)
おや、新車販売台数より多いですね!
が、「中古車登録台数」 = 「中古車(小売)販売台数」ではありません!ここには業者間売買やその他の数字が含まれているのです。
中古車登録台数 = 中古車新規登録数 + 移転登録数 + 変更登録数
中古車登録台数は「中古車新規登録数」「移転登録数」「変更登録数」の3つの登録台数で構成されています。
1)中古車新規登録数
「登録抹消」した車を再登録した台数。抹消された状態の場合、公道を走ることはできず、また、車に関わる税金を納める必要がありません。この状態のクルマを再度「登録」した台数ですから、消費者に「小売」された台数と見なすことが出来ます。
中古車登録台数の25%前後です。
2)移転登録数
販売時などに車両名義変更した台数。これは「個人から業者」「業者から業者」「業者から個人」など、車の所有者が変わるたびに登録される台数です。
中古車登録台数の70%前後です。
ここで、中古車の一般的な流通を思い出しましょう。
- 消費者Aが買取店Bに売却する = 登録抹消され「移転登録」される
- 買取店Bが「業者間中古車オークション」を通して中古車販売店Cに販売する = 「移転登録」される
- 中古車販売店Cが消費者Dに車両を販売する = 「移転登録」 される
このケースでは3回移転登録がされますが、新しい消費者に渡った車は1台ですね!もちろん、個人間売買で1回のみ移転登録がある場合もありますが、社会一般的には上記の例が最も多いでしょう。従い、移転登録数の1/3が、実際の「小売台数」と推定されます。
3)変更登録数
住所変更や婚姻による氏名変更の台数。従い、基本的に中古車の売買には関係ない数字と言えます。台数も多くありません。
中古車登録台数の7%前後です。
中古車小売販売台数の推定
上記の通り、中古車の「小売」販売台数は、「中古車新規登録台数 + 移転登録数の1/3」に近しいと推定されます。ところが、軽自動車については「中古車登録台数」のみ公表されており、その内訳がわかりません。
そこで、軽自動車も含めた中古車小売台数を推定する為に、1)中古車新規登録数、2)移転登録数、3)変更登録数の割合が、一般乗用車と同じと仮定して、推計します。
その結果が「約320万台」となるのです。
ソース) 一般社団法人日本自動車販売協会連合会、矢野経済研究所 - 2019年版 自動車アフターマーケット総覧
中古車販売店の分類と数
中古車購入は、1)事業者から購入するケースと、2)個人間売買 -メルカリのようなマーケットプレース含むに分かれます。
2019年現在の日本では、中古車ディーラーから購入するケースが大半をしめます。カーセンサーやグーネットといった中古車情報のポータルサイトで検索する方も多いと思いますが、そこに中古車を掲載しているのは、中古車販売業者になります。
中古車小売業者の分類
大分類すると、販売業者は以下の通りに別れるかと思います。
- カーメーカーのディーラー系列
- フランチャイズ/多店舗展開型の中古車ディーラー
- 独立系中古車ディーラー
- 兼業中古車販売店(整備工場、ガソリンスタンドなど)
中古車販売店の数
どのくらいの中古車取り扱い業者がいるかご存知でしょうか?実は、公式なデータはありません。様々な調査によると、全国に2-3万店舗 あると推定されています。
中古車業は、必要な許認可は「古物商」のみ、大きな資本なく始められることから、参入障壁が低く、入れ替わりも激しい業界と言えます。
ソース)経済産業省資料、経済産業省商業統計、株式会社PROTO公表資料
中古車販売専業の主要プレイヤー
近年、メーカー系中古車販売店が力を増していますが、中古車といえば、やはり専業の会社が消費者には馴染みがあります。ここで、業界トップクラスの数社の決算等情報を見ていきましょう!
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ガリバー(Gulliver)を運営するIDOM - 2019/02月期
- 店舗数:約550
- 売上:3,094億円
- 営業利益:34億円
- 時価総額:278億円 - 2019年6月14時点
- 出所:バフェットコード
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ビッグモーター
- 店舗数:約300
- 売上:約5,000億
- 未上場
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ネクステージ - 2018/11月期
- 店舗数:約90
- 売上:1,631億円
- 営業利益:44億円
- 時価総額:854億円 - 2019年6月14時点
- 出所:バフェットコード
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ケーユー(KEIYU) - 2019/03月期
- 店舗数:約27
- 売上:972億円
- 営業利益:57億円
- 時価総額:274億円 - 2019年6月14時点
- 出所:バフェットコード
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アップル(アップルオートネットワーク)
- 店舗数:約240
- 未上場・フランチャイズ
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カーセブン(カーセブンディベロップメント)
- 店舗数:約160
- 未上場・フランチャイズ
儲かってますね!余談ですが、ビッグモーターやネクステージの急成長、業界でのし上がりが凄いです。。。!
業界構造として、正確には「中古車買取」と「中古車販売」で得意なプレーヤーは入れ変わりますが、この記事ではその観点は省きます。
中古車販売店は小規模経営が多数派
ところで誰もが知るガリバー/Gulliverの店舗数は512店舗しかありません。フランチャイズで有名なアップルは241店舗、カーセブンは160店舗。全国には中古車販売店は2-3万店舗ありますので、中古車販売店の大半が、個人経営等小規模の経営ということになります。
個人間の中古車売買(CtoC)
最後に、最近ではメルカリも参入している個人間の中古車売買についても見てみましょう。今後の動向を予測する上で重要なセグメントです。
そもそも論として、日本は、諸外国に比べて個人間の中古車売買が少ない国です。
自動車購入のうち個人間売買の比率は、アメリカで29%、イギリスで42%、日本は6%しかありません。
そもそも、中古車:新車の比率が、アメリカで3:1、イギリスで3.5:1だそうです。上述の通り1:2である日本とはそもそも中古車の普及度合いが異なります。
出所:国土交通省
個人間売買は、法律(消費税)により消費税がかからない為、単価が高く消費財がバカにならない中古車にとって、経済的にはお得なはずです。
推測の域を出ませんが、以下が日本で個人間の中古車売買が普及していない原因かもしれません。
- 登録変更の手続き(運輸局への名義登録作業や車庫証明など)が解りにくい(業者に任せることが楽)
- 中古車の品質に関する不安感から、日本人には馴染みが薄かった
- ここは調査が足りないのですが、上記国交省の資料に寄れば、アメリカ、イギリスと異なり日本はトレーサビリティが無いそうです。ここは重大な点かもしれません。
中古車市場の未来予測
予測は難しいですが「減少要因」と「増加要因」を考えると、「微増」が見込まれると考えます。
減少要因
- 人口減少
- カーリース・カーシェア普及
増加要因
- 車齢長期化
- 個人間売買の増加
- 中古車のシェア増加(上述の通り、諸外国比で日本は中古車の割合が小さい)
中古車市場のトレンドと動向
自動車の寿命が伸びていたり、シェアリングの普及など乗り方に変化が出たり、愛車信仰が薄れたり、メルカリなどのベンチャー・スタートアップが個人間の中古自動車売買に参入したりと、着実にマーケットに変化が見られます。ガリバーを運営するIDOMも個人間の中古自動車売買:ガリバーフリマを開始、他にもCtoC中古車売買や、CtoCに限らずITを活用した中古車売買サービスが複数登場しています。
従い、日本の中古車市場は伸びるポテンシャルが高いと考えられます。
最後に宣伝です。
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