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株価(時価総額)とその推移
オートバックスは泣く子も黙る「一部上場企業」。上場企業たるもの「株価で語れ!」ということで、手始めに時価総額とその推移を見てみます。
時価総額「1,445億円」 @2019年末 -> 「1,000億」 @2020年4月末
2019年末
2019年末の時価総額は約1,500億円,500億円前後の企業は、上場企業の中で上から600-700番台くらいです。同じ規模の有名な会社は「RIZAP」「スカパー」「ノジマ電気」「タカラトミー」などがあります。
「兆」超えの巨大企業には及びませんが、日本を代表する大企業と言えますね!
2020年4月末
新型コロナ(COVID-19)の影響で株価は全世界的に下げています。
オートバックスの最新決算(2020年3月期)が発表された2020年4月末時点で、約1,000億円まで下落しています。
過去5年間の推移(2016 - 2020年)
過去5年の株価の推移を見てみると、上がったり下がったりを繰り返しながら1,000億円から1,800億円のレンジで安定して推移しています。よく言えば「安定期に入っている企業」、悪くいうと「成長期ではない会社」と(市場には認識されていると)言えそうです。
配当性向:80-90%
配当性向(利益から何%を株主に還元するか)は80-90%。日本企業の平均と言われる30%を大きく上回っています。利益を再投資に回さずに株主に還元する、「成長企業」ではなく「安定企業」であることが配当性向からも言えるかもしれませんね!
業績(売上と利益)をチェック
次に業績を見てみましょう!株価が大きく変動していないということは、業績も大きくは変わらないと言えそうです。
売上(過去5年2,000億円超で安定推移)
過去5年で見ると、大きく「伸ばす」ことも「減らす」こともなく、安定的に2,000億円超の売上を出しています。正確には「微増継続中」といったところです。一方、2,373億円の売上を記録した2012年から見ると減少傾向が見て取れます。
- 2012年3月期:売上2,373億円
-(中略)-
- 2016年3月期:売上2,081億円
- 2017年3月期:売上2,040億円
- 2018年3月期:売上2,116億円
- 2019年3月期:売上2,138億円
- 2020年3月期:売上2,214億円
利益(過去5年 50億円前後で安定推移)
こちらも過去5年、毎年微増していますが、大きな変化は見られません。純利益で40-60億円、営業利益で60-80億円で安定的に推移しています。ただし、営業利益137億円、純利益84億円を記録した2012年3月期から見ると、売上同様に減少しています。
- 2012年3月期:営業利益137億円、純利益84億円
-(中略)-
- 2016年3月期:営業利益67億円、純利益44億円
- 2017年3月期:営業利益58億円、純利益30億円
- 2018年3月期:営業利益73億円、純利益54億円
- 2019年3月期:営業利益75億円、純利益55億円
- 2020年3月期:営業利益75億円、純利益38億円
最新決算では、営業利益ベースでは過去と大きく変わらない一方で、特別損失22億円の形状により、純利益を落としました。「固定資産の減損損失」とのみ説明があるので、具体的な内容は不明です。
3つの事業(国内事業、海外事業、ディーラー・ネット他事業)
オートバックスの事業は大きく3つに分かれます。
- 国内オートバックス事業
- 海外事業
- ディーラー・ネット他事業
国内事業が80%以上
「売上」「利益」「人員」と公開されている3つの観点で「国内オートバックス事業」が80%以上を占めています。
利益に限って言えば、ほぼ全てを「国内オートバックス事業」が稼ぎ出しています。「海外事業」は「赤字」、「ディーラー・BtoB・ネット事業」は2019年3月期:約10億円の赤字、2020年3月期:約54百万円と、業績には殆ど貢献していません。
従い、以下では「国内オートバックス事業」に絞って、会社の中身を見てみようと思います。
585店舗を有する国内オートバックス事業
「オートバックス」と言われて殆どの方が想起するのはロードサイドにある店舗型のオートバックスですね!これが国内オートバックス事業です。2020年3月末時点で全国に585店あります。2019年3月時点で全国に597店舗でしたので、1年間で12店舗減少したようです。
約80%がフランチャイズ店舗
全585店舗のうち、直営店は20店舗しかなく、フランチャイズの店舗が80%近くを占めています。
オートバックスは、フランチャイズ店舗からの①ロイヤリティ(売上に対して課される手数料みたいなもの)や②フランチャイズ店舗への卸売にて大きく稼いでいるのですね!
国内オートバックス事業の大分解!
ロードサイドで見かけるオートバックス。いったいどんな事業やサービスを展開しているのか決算短信(2020/03期)と決算説明資料(2020/03期)を元に紐解いていきましょう!
年間1,793億円を売り上げるオートバックスの事業内容
オートバックスは全585店舗のち、約80%がフランチャイズ店舗、20店舗が直営です事業内容は以下の通りとなり、それらにて「1,793億円」を売り上げています。
- フランチャイズ加盟店に対する①「タイヤ・ホイール」「カー用品」等の卸売②店舗設備のリース
- フランチャイズ加盟店の売上に対する一定比率でのロイヤリティ
- 一般消費者に対して『直接』、カー用品等の販売、取付サービス、車の整備、車検、車の買取・販売
これは「フランチャイズ運営事業者」としての事業内容です。消費者視点での実態がよく分かりませんね。
全585店舗の合計売上高 : 2,668億円
フランチャイズ各店舗を含めた全597店舗の「売上高」とその「内訳」が以下の通り公表されています。
全店舗の合計売上
国内585店舗売上高 : 2,668億円
店舗売上の内訳
- カー用品 + サービス : 2,147億円(売上対比 79%)
- 車買取・販売 : 276億円(売上対比 10%)
- 車検・整備 : 197億円(売上対比 9%)
- 中古品・燃料 : 47億円(売上対比 2%)
80%近くが、みなさんがイメージするオートバックスの事業「カー用品 + サービス」ですね。
ちなみに「サービス」には、「タイヤ」「カー用品(含:カーナビ、ドラレコ、急発進防止装置)」の取付工賃が入っています。逆に言うと、「車検・整備」の売上には、それらの工賃は含みません。
安い!?オートバックスの車検
オートバックスでは近年、車検に力を入れており、2020年3月期の実績は以下の通り公表されています。
- 車検・整備売上:197億円(前年比 +0.4%)
- 車検実施台数:63万4千台(前年比 ▲2.2%)
- 車検を通せる指定工場:423店(前年比 +2店)
これらの数字を算数してみると、色々なことが見えてきます。
1台当たりの車検売上:約30,000円
1台当たりの車検売上は、約30,000円以下になります。安いですね!
勿論、これとは別に売上には加算されない法定費用(「重量税」と「自賠責保険」)が加わります。
- 1台当たりの車検売上 : 30,246円
※車検・整備売上/車検実施台数の為、車検単体ではもっと安くなるものと思われます。
交換部品売上が入ってない?
整備を知っている立場からすると、車検売上30,000円/台は、安過ぎますね。
車検時には消耗品などを中心に部品の交換を行う為、もっと値段が高くなるはずです。
例えば、国産車ディーラーの平均的な車検売上は約90,000円/台です。
開示されていない為わかりませんが、部品代は「カー用品 + サービス」部門に計上されているのかも知れません。
店舗当たりの車検・整備売上:約4,500万円
この数値にはカー用品の取り付け工賃は含まれていません。ですので、一般的な定義でいう整備売上はもっと有るはずですが、公表数字だけで見ると、店舗当たりの整備売上は約4,500万円です。
- オートバックス1店舗当たりの車検整備売上 : 4,547万円/店舗
この数字は整備振興会連合会が公表している整備工場当たりの数字に近しい数字となっています。
整備工場当たりの年間整備売上(2019)
専業整備工場 : 3,470万円/年
兼業整備工場 : 4,349万円/年
ディーラー : 1億6,925万円
オートバックスで働く整備士 : 店舗あたり6名
オートバックスは、近年車検を始めとする整備事業に力を入れていることから、メカニックの採用も積極的に行なっています。
全部で3,700名の整備士が勤務
全国のオートバックスの店舗では、合計3,700名以上の自動車整備士が勤務しているそうです。
全597店舗ですから、1店舗あたり約6名のメカニックが勤務していることになりますね。
オートバックスで働く整備士の給料
オートバックスで働く整備士の正確な給与水準は公表されていません。私が把握する限り、オートバックスのメカニックは①正社員②アルバイトの2つに分かれます。私の感覚からしてアルバイトのメカニックというのは想像つかないんですけどね、、、(腕と資格を抜きにすれば誰でもメカニックと名乗れます)
Seibiiには、元オートバックスの整備士が複数名いらっしゃいます。皆一様に「手取りで月20万円程度」低い給料で大変だったと嘆いています。
※参考
【自動車整備士の給料】統計データと稼ぎの実態 2023年最新版
一般的に「安い」と言われる車の整備士の年収。本当に安いのでしょうか。自動車整備士は「国家資格」です。その人数は約33万人。人手は足りず、専門性が高いお仕事です。近年は、車の高度化が日進月歩で進んでおり、DIYでできるレベルの整備・修理が激減しています。つまり、誰にでもできる仕事ではないのが整備士です。自動車整備士の一般的な稼ぎ・年収、その実態を、実際に働くメカニックへのヒアリングや統計データの確認を通して調査しました。
https://seibii.co.jp/blog/contents/mechanic-salary/
オートバックスの場合、殆どがフランチャイズですので、店舗毎に採用基準や給与体系が異なったり、アルバイトの整備士も多数いますので、その辺りも影響しているのでしょう。
オートバックス正社員の平均給与は737万円
有価証券報告書によると、オートバックス社員の平均給料は737万円です。これはオートバックス本部に勤める正社員の平均給料です。正社員と、各店舗に散る現場メカニックの間の給与格差は相当にありそうです。
整備士1人当たりの整備売上は平均並み
ところで、整備士1人当たりの整備売上を推定してみようと思います。
公表されている車検売上から整備士1名当たりの年間売り上げは「758万円(店舗当たり車検売上4,547万円/6名)」と計算できます。
この金額には「カー用品販売時の取付工賃」が入っていません。この部分の数字は公表されていませんが、整備士の作業範囲ですね。従い、この部分を加味すると、整備振興会連合会が公表している「整備士1人当たりの年間整備売上」と近しい売上になることが推定されます。
整備士1人当たりの年間整備売上(2019)
専業整備工場 : 965万円/年
兼業整備工場 : 1,098万円/年
ディーラー : 2,363万円/年
【まとめ】 オートバックスの整備事業は伸び代がある
①オートバックス1店舗当たりの整備売上、②整備士1人当たりの整備売上の2つの指標で、ディーラーと大きな差が有ることがわかりました。
オートバックスの企業規模、知名度、ブランド力からすると、オートバックスの整備事業はまだまだ伸ばせる余地が高いと言えそうです。
鍵は「質の高い整備士の確保」「ディーラー対比での競争優位の確立」「マーケティング」と言えるでしょう。
以上です。随時Updateしていきます。