普段耳にする機会が殆どない「燃料ポンプ(フューエルポンプ)」。しかし、長くクルマに乗っていると避けられないのが燃料ポンプの故障や交換になります。おおよそ5万-10万キロで交換が必要です。この記事では、そんな燃料ポンプの役割と作動、交換費用、実際の交換の様子をご紹介します。
目次
フューエルポンプの基礎知識(名称と2つの役割)
Seibiiでは、出張で燃料ポンプ(フューエルポンプ)のお取替えを行っています。実は交換需要が多いアイテムの1つです。
燃料ポンプの名前を聞いたことのある方が少ない通り、通常のお車のメンテナンスで交換することは滅多になく、燃料タンクの中で黙々と働いているので、目立つことはありません。
そんな燃料ポンプですが、「10万キロを超えた車両」や「長年動かしていなかった車両」では故障を起こすことが多く、修理アイテムとしてたびたび登場します。
「古いキャブレター車」では「機械式の燃料ポンプ」を使用していますが、この記事では、現代の殆どの車で使用されている「電気式燃料ポンプ」の役割や作動の仕組み、実際の交換の仕方をご紹介します。
名称 : 燃料ポンプとフューエルポンプ
一般的には「燃料ポンプ」と呼ばれますが、整備の現場では「フューエルポンプ」と呼ぶことが普通です。部品名としても フューエルポンプ と呼ぶことが通常です。燃料を英語読みのフューエルに変えているだけなので役割自体に変わりはなく、どちらの名称も使用しても問題ありません。
役割 : 圧送という重要な役割
燃料ポンプの役割は、「エンジンに燃料を供給する」ことです。燃料タンク内に入っている燃料、つまりガソリンを、ポンプの力でエンジンへと送ります。その名の通り「燃料」の「ポンプ」ということですね。
当然ですが、燃料ポンプが故障すると、エンジンにガソリンを送ることができなくなり、エンジンを動かすことができなくなります。
また、燃料を単純に送るだけでなく、圧力を高めて「圧送」しています。その為、ポンプの吐出する力が弱くなると、十分に燃料の圧力を高める事が出来ずにエンジンの不調の原因となります。
フューエルポンプの仕組み
燃料ポンプシステムの構成
燃料ポンプのシステムは、主に以下4つで成り立っています。
- ヒューズ
- IGスイッチ
- リレー
- ポンプ
燃料ポンプの仕組み
車種によって若干の違いはありますが、おおよそどの車も次のような仕組みとなっています。
- エンジンのキーを回した時に、リレーのコイルに通電
- リレー内部のコイルに磁力が発生し、磁力に引かれリレーのスイッチがONとなる
- リレーのスイッチがONになったことで、燃料ポンプへ電気が流れポンプが作動
ヒューズの役割
ヒューズは過電流が流れた場合に回路を保護するためのものです。過電流が流れるとヒューズ本体が溶けて回路を遮断するようになっています。
IGスイッチの役割
IGスイッチは自動車のキーを回すことです。キーを回すとアクセサリー(ACC)、アイジー(IG)、最後はスタート(ST)になります。IGの位置にキーを回した時に、リレーに電気が流れるようになっています。
リレーの役割
リレーとはスイッチ回路のことです。リレーの内部にあるコイルに電気が流れると内部のスイッチがONになります。
上の図だと、IGスイッチ(キーを回した時)にリレーの内部のキルに通電するようになっています。するとコイルに発生した磁力によって、リレー内部のスイッチがONとなります。
フューエルポンプの構造と種類
燃料ポンプ本体は(1)モーター部と(2)ポンプの2箇所から構成されています。
ポンプ内部にあるブラシより通電しアーマチュアを回転させます。アーマチュアにはインペラという羽が取り付けられており、アーマチュアが回転することによって、羽が回転し燃料を吸引します。
ポンプの吐出部にはチェックバルブが設けてあり、燃料が一定の圧力に達するとバルブが開き燃料を吐出します。
このチェックバルブは一方通行となっており、エンジンが停止した際には、燃料パイプの圧力を保つ役割があります。このチェックバルブのおかげで、再びエンジンを掛けた時に、必要な燃料の圧力へとすぐ上昇することができます。
燃料ポンプの種類 : アウトタンク式とインタンク式
燃料ポンプは(1)アウトタンク式と(2)インタンク式と2つの種類に別れます。
ただし、近年ほとんどの車両は燃料タンクのタンク中にポンプを配置するインタンク式を採用しており、アウトタンク式の燃料ポンプは殆ど見かけません。
アウトタンク式燃料ポンプ
キャブレーターを採用していた時代は、機械式の燃料ポンプがエンジンに取り付けられていましたが、キャブレーターから電気制御インジェクションに変わると電気式燃料ポンプへと移行していきました。この移行期の車両にアウトタンク式の燃料ポンプが採用されています。
アウトタンク式燃料ポンプは、エンジンルームの中に取り付けられており、燃料タンクからエンジンへと繋がる燃料パイプの途中に付けられています。
アウトタンク式燃料ポンプのメリット
- エンジンの近くにあるため、エンジンに必要な燃料の圧力を維持するのに優れている
- ポンプがエンジンルームにあるため交換が容易
アウトタンク式燃料ポンプのデメリット
- ポンプが破損した場合に、エンジンルームにガソリンが飛び散る危険性がある
- ポンプの圧力が高くなりすぎた場合に、燃料をタンクへと戻すリターンパイプが必要となる
これらデメリットがあるため、近年ではアウトタンク式燃料ポンプはほとんど見かけなくなりました。
インタンク式燃料ポンプ
インタンク式燃料ポンプは燃料タンクの中にポンプが取り付けられています。
インタンク式燃料ポンプのメリット
タンクの中にポンプがあるため、交換が容易ではありませんが、その分安全性が高くなっています。事故などで車両が破損した場合でも、燃料ポンプはタンクの中にあるため漏れる心配はありません。また、燃料ポンプはガソリンの中に浸されており、長時間の運転でポンプが加熱してもガソリンによって冷却されます。
ポンプの圧力が上昇した時も、タンク内に燃料を放出できるので、容易に圧力の調整ができます。
フューエルポンプの寿命 : 5-10万キロ
燃料ポンプの寿命はおよそ5万キロから10万キロといえます。距離に幅があるのは車の使用状況によるところがあるからです。
車のエンジンが掛かっている間は、ポンプは動き続けます。アイドリングが多い車両にとっては走行距離が短くてもポンプは回り続けますので早く寿命を迎えます。
逆に高速道路によく乗り長距離を移動される車両は燃料ポンプ寿命の距離が伸びます。
燃料ポンプの寿命は、走行距離よりもポンプを稼働している時間に影響されると言えます。
フューエルポンプの故障と原因 : 異音発生やエンジンが始動しない
燃料ポンプが故障するパターンとして(1)走行中に異常が発生するときと、(2)駐車中に異常が出る場合があります。
走行中に燃料ポンプに異常が発生する場合は、異音が発生することが多くなります。また、駐車中に故障してしまった時にはエンジンが掛からなくなります。
異音の発生 : ウィーンという大きな音に注意
走行中、燃料ポンプに異常が発生した時には、ポンプモーターより異音が発生します。燃料タンクより「ウィーン」などの大きなモーター音が聞こえたら注意です。
異常が無く、通常通り燃料ポンプが稼働しているときにもポンプが動いている音はします。しかし、エンジン音により、通常は気になりません。
運転していて唸るような大きなモーター音が聞こえたら、燃料ポンプの故障を疑うことが出来ます。
急に動かなくなる
車両を駐車していて、燃料ポンプが故障した場合は、エンジンが始動しなくなります。先ほどの異音のケースと異なり、動いていない為、燃料ポンプからは音がしなくなります。
通常、エンジンのキーをIGの位置にした時、燃料の圧力を高めるためにポンプが稼働します。しかし、ポンプが故障した時には、この初期のポンプの稼働が行われなくなり、作動音が聞こえなくなります。
原因 : 経年劣化と残留物
燃料ポンプの故障の原因としては(1)ブラシ摩耗による経年劣化と(2)ワニスなどの残留物による通電不良やモーター固着があります。
原因1. 経年劣化
燃料ポンプ内部のモーターは通常のモーターと同じように回転部にブラシが取り付けられており、このブラシを通して電気を流し、モーターを回転させます。そのため、長年の使用によりブラシが摩耗してくると通電が行われなくなりモーターが動かなくなります。
原因2. ガソリンの残量物
燃料ポンプの中にガソリンの残量物が付着すると通電性が悪くなったり、モーターそのものが固着してしまい動かなくなってしまいます。
ガソリンにはワニスやガム質などが含まれているので、モーターの中に残ったガソリンが揮発するとワニスやガム質がモーターの中に残留してしまいます。
頻繁にエンジンを始動し燃料ポンプが動いている時は問題ないのですが、長期間エンジンを掛けなかったり、たまにしかエンジンを掛けないと、これらのガソリンの残量物によってモーターが動かなくなってしまいます。
また、ワニスなどの残留物がモーターの中で引っかかってしまい、異音が発生するなどの原因となります。
フューエルポンプの交換・修理費用
ディーラー・修理工場
ディーラー、修理・整備工場、オートバックスやイエローハットなどのカー用品店の場合、様々な値段が設定されている為、個別お問い合わせが必要です。
出張フューエルポンプ(燃料ポンプ)交換のSeibii
出張整備を行なっているSeibiiの場合「出張費」「工賃」「部品・備品代」「消費税込み」で以下の料金設定となっています。(※金額が変わる場合がありますので、詳細はWebからお問い合わせください)
1. 国産普通ガソリン車の燃料ポンプ交換
- ¥35,000(出張費・工賃・消費税込み)
2. 輸入普通車の燃料ポンプ交換
- ¥52,500(出張費・工賃・消費税込み)
燃料ポンプ交換の交換方法(例:アコード(CD5型)
Seibiiでは出張にて燃料ポンプの交換作業を行っています。ここでは実際の燃料ポンプ交換の様子をご紹介します。
今回燃料ポンプの交換を行ったのはHONDAアコード(CD5型)です。
(ウィキペディアより引用)
はじめに
アコード(CD5型)はインタンク式の燃料ポンプです。インタンク式燃料ポンプは(1)後ろのシートを取り外すだけでポンプが取り外せるタイプと(2)燃料タンクを取り外さなければポンプが外れないタイプと別れます。もちろん、後者の燃料タンクを取り外すタイプのものは、その分手間と時間が掛かります
。
今回のアコードは、後者の燃料タンクを取り外さなければポンプが外せないタイプのものでした。
ステップ1. リヤシート取り外し
燃料タンクを取り外すためにまずは後ろのシートを取り外します。
すると、背もたれの後ろ側にビス3つでとまった蓋が見えます。蓋を外すと燃料ポンプが出てくるタイプの車両もありますが、今回のアコードのフューエルポンプは、ここには無く、燃料ゲージにありました。
コネクターとアースの配線があるので、取り外します。
ステップ2. 燃料タンク取り外し
次に燃料タンクを外していきます。
まずは車両をジャッキアップし、リジットラックにて固定します。次にm左後ろのタイヤを取り外します。タイヤを取り外すと、燃料タンクへと繋がっているホース2本と燃料パイプが見えるので取り外します。
そして、給油口へと繋がっているホース(大・小)を取り外します。
ホース類が外れたら燃料タンクを取り外します。燃料タンクは2つのバンドで留まっているので、このバンドを取り外します。
ある程度ボルトを緩めたら、タンクの下にジャッキを用意し、ボルトを取り外します。
ジャッキをゆっくりと下ろし、タンクを取り外します。タンクの中にガソリンが多く残っている場合には、ジャッキを掛けているところがタンクの重さで凹んでしまう可能性があるので、その場合にはゴムや木片、要らない雑誌などをジャッキとタンクの間に挟みます。
また、配線やホースの外し忘れがあると、タンクを下ろした時に配線やホースが破損する恐れがあるので、タンクをゆっくり降ろしながら外し忘れが無いか確かめながら作業を行います。
ステップ3. 燃料ポンプの交換
燃料タンクが外れたらポンプを取り外します。燃料タンクの上に付いているボルトを外すと、ポンプが取り外せます。
今回のアコードはシンプルにポンプだけが付いていましたが、最近の車両だと「サブタンク」が「ポンプ」と一緒に付いています。これは、サブタンクの中にガソリンを貯めることで、燃料が少なくなったときでも安定してガソリンを吸入するために設けています。燃料ポンプはサブタンクの中に入れられています。また、このタイプはガソリンの残量を計るセンダーゲージも一緒に取り付けられています。
サブタンクタイプの燃料ポンプを交換する時には、これらサブタンクやセンダーゲージを取り外してポンプを取り外します。
アコードはバンドと配線を取り外すとポンプが外れます。簡単ですね!そして新品のポンプへと交換します。
ステップ4. タンクを取り付ける
後は逆の手順で取付を行っていきます。
燃料パイプにはガスケットがありますので、忘れないように新品のガスケットへと交換します。
ジャッキを使いタンクを持ち上げ取り付けます。
ホースや配線を元に戻し、リヤシートを取り付けたら完了です。
ステップ5. 燃料フィルター交換
燃料ポンプと一緒に交換をおすすめするのがフィルターです。フィルターも10年、もしくは10万キロごとの交換をお勧めしています。フィルターが詰まってしまうとエンジンに燃料が供給されず、エンジン不調の原因となってしまいます。ポンプを交換する時と同じタイミングでフィルターも交換すれば、燃料関係のメンテナンスはバッチリでしょう!
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