ATFはトランスミッションの円滑なシフトチェンジや冷却・洗浄など、エンジンオイル同様に車にとって重要要素の一つです。
ATFの推奨交換タイミングは自動車メーカーごとに差がありますので、適切な時期を自分で把握しておく必要があります。
今回の記事ではATFを交換しないと起こる不具合や各自動車メーカーのATFの交換時期目安、交換にかかる費用を解説しています。また、ATF交換の際に気をつけたい注意点を2つ紹介しますのでぜひ参考にしてください。
目次
ATFの役割とは
ATFとは「オートマチック・トランスミッション・フルード」の略で、AT車専用のミッション用オイルです。
ATFの役割は非常に多く、主な役割は以下の通りです。
- 潤滑作用による円滑なシフトチェンジ
- エンジンからのパワーをトルクコンバーターに伝えて車を動かす(動力伝達)
- トランスミッション内部にあるギアを油圧で最適に変更する
- トランスミッション内部で発生した熱を循環させて冷却し、部品の焼き付きを防止
- 金属部品同士などが擦れて発生する汚れを洗浄する
エンジンオイルに代表されるようなオイルは「潤滑」の役割が大きいですが、フルードの代表的な役割は「油圧を発生させて最適なギアに変更する」ことにあります。
車にとってATFの重要度が高いことは明らかですが、日本の道路環境はストップ&ゴーが多くATに負担がかかりやすいのが現状です。
万が一故障すると10万円を超える修理費用が必要ですので、快適なドライブを楽しむためにも交換時期は必ず把握して適切に交換を行いましょう。
またAT車とCVT(無段変速)車を混在してしまう方も多いですが、構造はまったく異なるためCVT車には専用のCVTFが必要になりますので注意しましょう。
ATFを交換しないとどうなる?
ATFを交換しないとトランスミッション内でさまざまな不具合が生じます。
一般的に新品のATFは赤色をしていますが、走行距離や経年に比例して徐々に黒くなるのが特徴です。
ATFはエンジンオイルのようにレベルゲージで汚れや量を確認することができますが、オイル汚れだけでは不具合が出るか出ないかの点検をすることが難しいため、不具合が出る前に交換することが重要となります。
燃費が悪化する
動力伝達を切り替えるクラッチにスラッジ(汚れ)が溜まってしまうと滑りを起こし、伝達効率が低下して燃費が悪化します。
ギアが入りにくくなる
ソレノイドバルブという電磁弁に汚れが付着するとオイルの圧力が逃げてしまい、ギアが入りにくくなります。
変速ショックが大きくなる
オイル粘度を保てる状態なら衝撃を吸収してくれますがATFが劣化すると粘度は弱まり、正常な油圧制御を行えず変速ショックを感じやすくなります。
ATFの交換頻度はメーカーによる
各自動車メーカーが公表しているATFの交換目安を紹介しますので、自身の車と照らし合わせてみましょう。
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トヨタ
砂利道などの過酷な環境(シビアコンディション)で使用する場合は100,000kmごとに交換 -
ホンダ
初回は80,000km、2回目以降は60,000kmごとに交換 -
日産
40,000kmごとに交換 -
マツダ
車種によって交換が必要な場合と不要な場合がある -
ダイハツ
100,000kmごとに交換 -
スズキ
40,000kmごとに交換。シビアコンディションの場合は30,000km推奨 -
スバル
40,000kmごとに交換
自動車メーカーごとにATFの推奨交換時期は、全く違うと言っても過言ではありません。
そのため自分自身で愛車の交換時期を把握しておくことが大切です。
なおカー用品店などディーラー以外でATFを交換した場合、ATFメーカーにもよりますが推奨交換時期は20,000km〜30,000kmとなっています。
ATFの交換方法と交換費用
ここではATFの交換方法と交換費用を解説します。
DIYでの交換もできなくはありませんがわずかな汚れも混入させないため、専門知識を有するディーラーやカー用品店へ依頼してください。
ディーラーやカー用品店で交換する
ディーラーやカー用品店では「ATFチェンジャー」という専用機械でオイルの汚れや残量を確認し、交換を行います。基本的にATF診断は無料で実施してくれますので、気軽にディーラーやカー用品店を訪れてみましょう。
またATFチェンジャーには店舗ごとに指定されたオイルが充填されており、持ち込みに対応してもらえないことが多いため、自分で用意したATFに交換してもらいたい場合には予め確認するようにすると良いです。
ATFの交換方法は2通りあるので、ここではそれぞれのATF交換方法について詳しく解説していきます。
①循環交換方式
循環交換方式ではATFチェンジャーで圧力をかけながらATFを注入します。
新しいATFと古いATFを抜いたり入れたりしながらトランスミッション全体に循環・排出していき、ATに負荷をかけることなく徐々にキレイなATFに交換していく方法です。
②ドレン下抜き方式
ドレン下抜き方式ではエンジンオイルを交換するようにボディ下のドレンプラグからATFを排出します。
新しいATFはATFチェンジャー又はサクションガンという工具で注入していく方法です。
この方法ではATFを全て抜いてから新しいATFを入れる方法のため、ATに負荷が掛かりますが全て新しいATFに入れ替わるため、循環交換方式よりAT内がキレイになるのがメリットとなります。
費用は5,000円〜30,000円が目安
交換費用の目安は軽自動車で5,000〜10,000円、排気量が1.3Lに相当するコンパクトカークラスなら18,000円ほどです。
また排気量が大きくなればなるほどATFの量が増えるため交換費用も高くなる傾向があります。
カー用品店ではATFメーカーのオイルも選べますので、費用相場は10,000〜30,000円と幅広いのが特徴です。
ただどの店舗でも作業時間が1時間ほどかかりますので、作業を依頼する際には時間に余裕を持って予約すると良いでしょう。
ATFの交換のポイント
ATF交換にはメーカーの推奨タイミング以外に、注意したい重要なポイントが2つあります。ATはとても緻密な作りで問題が発生すれば丸ごと交換が必要なほど、分解や修理が難しい部品です。
推奨タイミング以外で変速ショックの増加や燃費悪化を感じたら、早めにディーラーやカー用品店にいき点検してもらいましょう。
頻繁に交換しすぎない
ATFを頻繁に交換すると微細な異物がトランスミッション内に混入するリスクが高まり、ATの故障の原因となります。
近年の車はATFの交換サイクルが長くメンテナンスフリーのATも存在しますので、自分の車の交換サイクルをよく調べておきましょう。
一度に全部交換せず複数回に分ける
ATFは少量ずつ古いオイルを抜いて新しいオイルを足していくのが正しい交換方法です。
ATFを一度に全量交換してしまうとギアなどに長年こびり付いていた汚れが一気に流れ出し、トランスミッション内で目詰まりを起こしてしまいます。
ただ適正な回数で交換している場合や車両によってはドレイン下抜き方式で一度に全て交換しても問題ない場合がありますので、自分の車の状況や作業をするお店と相談してみると思います。
車のオートマオイル(ATF)の交換でのトラブルとはどんなものがあるのか?
長期間交換をしていなかったオートマオイルを交換すると、トランスミッション内で以下の不具合を起こしてしまうことがあります。
・ギアの滑り
・エンスト
・シフトチェンジの不具合
もし長期間オートマオイルを交換しないと、ギアの磨耗によって出た金属粉などで汚れてしまい、トランスミッション内に固着します。突然不具合を起こすことはあまりありませんが、オートマオイルを交換することで、固着していた汚れが剥がれてオイル内を移動してしまうことから上記のような不具合が起こってしまいます。
また最悪の場合は走行不能になってしまう可能性があるので、オートマオイルの交換は定期的におこないましょう。もしオートマオイルの交換によって不具合が起きてしまった場合は、トランスミッション内の洗浄やトランスミッション本体の交換が必要です。
交換するオイルは所有している車によって、グレードや添加物が細かく決められているので純正オイルを購入することをおすすめします。ATFの交換で専門的な知識がない場合は、ディーラーやATF交換を専門的に扱っている店に相談しながら作業を進めると良いでしょう。
まとめ
ATFはスムーズな変速や低燃費を実現するため、車にとって欠かせない存在です。自動車メーカーごとの推奨交換時期を把握し、定期的に交換を行ってください。
ATFは頻繁に交換したり一度に全て交換したりするとAT内部にスラッジなどが詰まり、故障のリスクが高まりますので注意が必要です。
もし中古車を購入された場合は記録簿を参考にしてATFの交換時期を調べ、忘れずに交換を行いましょう。