近年、「若者のクルマ離れ」が話題となっています。
2025年の最新調査では、その傾向がさらに顕著になっていることが明らかになりました。
株式会社KINTOが実施した【2025年版】Z世代のクルマに対する意識比較調査によると、東京都内在住のZ世代(18歳〜25歳)のうち72.8%が「若者のクルマ離れ」を自覚していることが分かりました。
この割合は2024年と比べて21.5ポイントも増加しており、特に都市部でのクルマ離れが加速していることが浮き彫りになりました。
本記事では、調査結果をもとに、Z世代のクルマに対する意識の変化や、その背景にある経済的要因について詳しく解説していきます。
目次
Z世代の「クルマ離れ」は本当なのか? 都内では72.8%が自覚
株式会社KINTOが実施した本調査では、東京都内に住むZ世代(18歳〜25歳)のうち、72.8%が「自分は若者のクルマ離れの一員だと感じる」と回答しました。
この割合は、昨年の51.3%から21.5ポイント増加しており、1年で大きく意識が変化したことが分かります。
一方、地方在住のZ世代でも、46.7%(昨年比12.7ポイント増)が「クルマ離れを自覚している」と回答しました。
都内ほどではないものの、地方においてもクルマ離れの傾向が進んでいることが見て取れます。
クルマを持たない理由は? 都内と地方で異なる傾向
では、なぜZ世代はクルマを持たないのでしょうか?
調査では、クルマを所有していない理由として以下の回答が多く挙げられました。
【都内在住】
- 「家族のクルマで間に合うから」(43.1%)
- 「自動車の価格が高いから」(31.9%)
- 「自動車の維持費が高いから」(31.9%)
【地方在住】
- 「自動車の価格が高いから」(35.6%)
- 「自動車の維持費が高いから」(32.2%)
- 「家族のクルマで間に合うから」(28.8%)
都内では「家族のクルマで間に合う」との回答が最多であるのに対し、地方では「自動車の価格の高さ」が最も大きな理由となっています。
都市部では公共交通機関が発達しているため、家族とクルマを共有することで十分な移動手段が確保できる一方、地方では経済的な負担がクルマ購入の大きなハードルになっていることが分かります。
クルマのサブスクに関心を示すZ世代、都内では92.0%が「検討したい」
Z世代のクルマ離れが進む一方で、新しいクルマの所有形態である「クルマのサブスクリプション(サブスク:月々の定額支払いでの利用の意)」に対する関心が高まっていることも明らかになりました。
調査によると、「クルマのサブスクを検討したい」と回答した割合は全体で83.7%(昨年比5.8ポイント増)に達し、都内に限ると92.0%(昨年比11.3ポイント増)と非常に高い数値となりました。
Z世代の間で、クルマを購入するのではなく、サブスクのように「必要な期間だけ利用する」という考え方が広がっていることが分かります。
クルマのサブスクとは?
クルマのサブスクリプションとは、月々一定の料金を支払うことで、保険・税金・メンテナンス費用などを含めた形でクルマを利用できるサービスです。
契約期間が決まっており、利用終了後はクルマを返却する形になります。
サブスクの最大のメリットは、初期費用を抑えられる点と、税金や保険の手続きが不要である点です。
特に、まとまった資金を用意しづらい若い世代にとっては、経済的負担を軽減しながらクルマを持てる選択肢となっています。
都内と地方でサブスクの認知度に差
しかし、クルマのサブスクの認知度には、都内と地方で大きな差があることも分かりました。
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Cell | Cell都内在住 | Cell 地方在住 |
Cell サブスクを知っている | Cell43.1%(昨年比+9.3pt) | Cell 25.0%(昨年比-5.1pt) |
Cell 聞いたことがある | Cell 26.2% | Cell 40.3% |
都内では認知度が高まり、実際に利用を検討する層も増えていますが、地方ではまだ認知度が低いことが分かります。
地方ではクルマの購入が一般的な選択肢として根付いているため、サブスクのような新しいサービスが広まりにくいのかもしれません。
とはいえ、地方でも69.4%が「サブスクを検討したい」と回答しており、認知度が向上すれば今後さらに利用者が増える可能性があります。
Z世代の収入と消費行動の変化「収入が増えたら消費を増やす」が8割超
Z世代のクルマ離れの背景には、経済的な要因が大きく関係しています。そこで、本調査ではZ世代の収入や消費行動の変化についても調査が行われました。
都内の約半数、地方の3割強が「今後、収入が増える」と予測
まず、今後の収入の見通しについて尋ねたところ、以下のような結果となりました。
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Cell | Cell 都内在住 | Cell 地方在住 |
Cell 大幅に増加しそう | Cell 17.1% |
| Cell 7.0%
|
| Cell やや増加しそう
| Cell 34.5% | Cell 25.6% |
| Cell 変わらない | Cell 43.7% | Cell 58.0% |
都内の51.6%、地方の32.6%が「収入増加を見込んでいる」ことが分かりました。
特に都内では、企業の賃上げの動きや労働市場の改善によって、収入増を期待するZ世代が多いようです。
一方、地方では慎重な見方をする傾向が強く、半数以上が「変わらない」と回答しました。
収入が増えたら「消費を増やす」と回答したのは都内8割、地方7割
次に、収入が増えた場合の消費行動について調査したところ、以下の結果となりました。
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Cell | Cell 都内在住 | Cell 地方在住 |
Cell 大幅に消費を増やす | Cell 18.6% | Cell 16.7% |
Cell 少し消費を増やす | Cell 61.4% | Cell __52.3% __ |
Cell 変わらない・減らす | Cell 20.0% | Cell 31.0% |
都内では80.0%、地方では69.0%が「収入が増えれば消費を増やす」と回答しており、消費意欲の高まりが見られます。
ただし、地方の方が「変わらない・減らす」と考える割合が高く、収入増があっても慎重な姿勢を取る人が多いことが分かります。
収入が増えても消費を増やさない理由は?
一方で、「収入が増えても消費を増やさない」と回答した人に、その理由を尋ねたところ、以下のような結果となりました。
Z世代の間では、物価上昇が続いていることへの懸念が強く、「物価が上がるため、収入が増えても消費は抑えたい」と考える人が多いことが分かります。また、「将来の不安に備えて貯蓄したい」という意見も一定数あり、堅実な金銭感覚を持つ傾向が見受けられました。
収入増加時の優先支出は「旅行・レジャー」と「趣味・娯楽」、クルマへの出費は二の次に
収入が増えた場合、Z世代はどのようなことにお金を使いたいと考えているのでしょうか。本調査では、優先的にお金を使いたい項目についても尋ねました。
都内は「旅行・レジャー」、地方は「趣味・娯楽」がトップ
都内では「旅行・レジャー」が最も人気であり、次いで「趣味・娯楽」「飲食・外食」がランクインしました。 一方、地方では「趣味・娯楽」がトップで、次いで「旅行・レジャー」「飲食・外食」となっています。
この結果から、Z世代は「モノを買うよりも、経験にお金を使いたい」という傾向が強いことが分かります。
特に都内では旅行に対する関心が高く「モノよりもコト消費」により、日々の都市生活のストレスを発散するために遠出したいという意識が反映されている可能性があります。
クルマへの出費は都内約半数、地方約4割が「増やしてもよい」
クルマに対する支出についても調査したところ、以下の結果となりました。
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---|---|---|---|
Cell | Cell 都内在住 | Cell 地方在住 | Cell クルマへの出費を |
大幅に増やしたい |
|
| Cell 18.8% | Cell 7.0% | Cell クルマへの出費を
検討してもよい
| Cell 27.1% |
| Cell 30.7% | Cell クルマへの出費は
増やさない
| Cell 54.1% | Cell 62.3% |
__都内では約半数(45.9%)、地方では約4割(37.7%)が、収入増加時に「クルマへの出費を増やすことを検討してもよい」と考えていることが分かります。
__しかし、依然として「クルマにはお金をかけたくない」と考えるZ世代が過半数を占めているため、クルマよりも他の消費が優先される傾向が続いていることが明らかになりました。
「若者のクルマ離れ」は本当に進んでいるのか? Z世代のクルマ観を再考
今回の調査結果からは、「若者のクルマ離れ」が進んでいるという傾向が数値として明確に示されました。
しかし、一方でZ世代がクルマに対して完全に興味を失ったわけではないことも分かります。
Z世代の7割以上が「運転が好き」と回答
まず、クルマ離れが進んでいると言われるZ世代ですが、実際には「運転することが好きだ」と感じている割合は意外にも高いことが判明しました。
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Cell | Cell 都内在住 | Cell 地方在住 |
Cell クルマの運転は | ||
とても好き |
| Cell 29.1% | Cell 29.7% |
| Cell やや好き | Cell 38.8% | Cell 35.6% |
| Cell やや好き | Cell 38.8% | Cell 35.6% | Cell あまり好きではない・嫌い | Cell 32.1% | Cell 34.7% |
都内・地方ともに約7割が「運転が好き」と回答しており、クルマそのものに対する興味や運転の楽しさは、決して薄れていないことが分かります。
将来的にはクルマを持ちたいと考えるZ世代も多い
また、「将来的にクルマが欲しいか?」という質問に対しては、次のような結果となりました。
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Cell | Cell 都内在住 | Cell 地方在住 | Cell __クルマはとても欲しい __ |
Cell 36.6% | Cell 43.0% | Cell やや欲しい | Cell __32.7% __ |
Cell __36.7% __ | Cell 欲しくない | Cell 30.7% | Cell 20.3% |
都内では69.3%、地方では79.7%が「将来的にはクルマが欲しい」と考えており、現時点ではクルマを持つことが難しくても、ライフステージの変化に応じて所有を検討する人は多いようです。
クルマを持つ場合、現金一括購入を希望するZ世代
では、将来的にクルマを持つとしたら、どのような購入方法を考えているのでしょうか?
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Cell | Cell 都内在住 | Cell 地方在住 |
Cell 現金一括購入 | Cell 46.7% | Cell 46.4% |
Cell ローン(残価設定型) | Cell 42.5% | Cell 31.4% |
Cell ローン(全額) | Cell 17.3% | Cell 20.5% |
Z世代の間では、「現金一括購入」を希望する人が最も多いことが分かりました。
しかし、都内では「ローン(残価設定型)」を希望する割合も高く、月々の負担を抑えながらクルマを手に入れる方法を検討する人も増えていることが分かります。
また、「クルマのサブスク」や「個人向けカーリース」など、新しい所有形態にも一定の関心が集まっており、クルマを購入せずに利用する方法が今後さらに広まる可能性があります。
まとめ 「クルマ離れ」ではなく「クルマの持ち方の変化」か
本調査の結果から、Z世代の「クルマ離れ」が進んでいることがデータとして明確になりました。
特に都市部ではその傾向が顕著であり、都内在住のZ世代の72.8%が「自分はクルマ離れしている」と感じているという結果となりました。
しかし、一方でZ世代の7割以上が運転を「好き」と回答しており、将来的にクルマを持ちたいと考える人も多いことが分かりました。
このことから、クルマへの潜在的需要は手堅いものがあり、「若者のクルマ離れ」というよりは、「クルマの持ち方が変化している」と捉える方が適切かもしれません。
クルマ離れの背景にある経済的要因
Z世代がクルマを持たない理由として、「クルマの価格が高い」「維持費がかかる」「家族のクルマで間に合う」などの経済的要因が大きく影響していることが分かりました。
また、収入が増えた際の優先的な支出先として、「旅行・レジャー」や「趣味・娯楽」が挙げられ、クルマへの出費は後回しにされる傾向も見られました。
クルマのサブスクという新しい選択肢
一方で、クルマのサブスクリプションサービス(サブスク)への関心が急速に高まっていることも注目すべきポイントです。
特に都内在住のZ世代の92.0%が「サブスクを検討したい」と回答しており、クルマを所有するのではなく、必要な期間だけ利用するスタイルが若者に受け入れられつつあります。
これはクルマへのニーズだけに限らず、昨今の「コスパ」や「タイパ」の良さを好む傾向と強く関係があるものと判断されます。
この流れを受けて、企業側も「クルマを持ちたい人」に向けた新しいサービスを提供する必要があるでしょう。
例えば、サブスクやカーリース、短期利用プランなど、柔軟なクルマの利用形態が今後ますます求められていくと考えられます。
Z世代がクルマとどう向き合うか?
今回の調査を通じて、「クルマ離れ」という言葉だけではZ世代の実態を十分に表せないことが分かりました。
彼らはクルマに対して興味を持ちつつも、従来のような「所有」にこだわるのではなく、経済的合理性を考えながら、新しい方法でクルマと向き合おうとしているのです。
今後、クルマを持つことがより手軽で、ライフスタイルに合ったものになれば、Z世代のクルマに対する意識も変わっていくかもしれません。
「所有」から「利用」へと変わるクルマのあり方が、次世代のスタンダードになりつつあるのかもしれません。
出典企業URL
https://kinto-jp.com/