米国を中心に自動車業界における顧客満足度調査を行うJ.D. パワーは、「2025年 米国EVエクスペリエンス(EVX)- オーナーシップ調査」の結果を発表しました。
今年で5回目となる本調査は、EV(電気自動車)およびPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)を所有する6,000人超のユーザーを対象に、EV所有体験のあらゆる側面を評価したものです。
本年の調査では、EVオーナーの総合満足度が前年よりも改善された一方で、米国新政権による政策変更の可能性がEV市場の成長に影響を与えるとの懸念も浮き彫りになっています。
目次
EVオーナーの満足度が回復傾向に
2024年型・2025年型のEVを対象とした調査によると、プレミアムBEV・マスマーケットBEVともに総合満足度が上昇しています。
マスマーケットセグメントでは、Hyundai IONIQ 6やKia EV6など新型モデルの投入が評価され、市場シェアも前年比で0.7ポイント増の9.1%に伸びました。
これは、EV税制優遇制度の拡充が影響しており、EV購入者の半数以上が「税額控除が購入の決め手」と回答しています。
情報提供の質が所有体験を左右
調査では、EV購入時にディーラーやメーカーからの情報提供が不十分である実態も明らかになりました。
特に初めてEVを購入した層において、「車両機能の使い方」に関する説明は多いものの、「維持費」など実生活に関わる情報提供はわずか12%にとどまっています。
今後、EV所有体験の質を高めるには、販売現場での説明強化が不可欠といえるでしょう。
プレミアムPHEVが新たな選択肢に浮上
今年から新たに評価対象となったプレミアムPHEV(高級プラグイン・ハイブリッド車)は、総合満足度でマスマーケットBEVを上回る結果となりました(741ポイント)。
完全なEVに切り替えることに不安を感じる消費者にとって、プレミアムPHEVは現実的かつ満足度の高い選択肢となりつつあります。
公共充電の満足度に改善の兆し
EV普及のボトルネックとなっている公共充電インフラに関しても、マスマーケットBEVで大きな満足度の向上(+86ポイント)が見られました。
これはテスラのスーパーチャージャーなど、既存インフラの開放・拡充が影響していると考えられます。
ただし、プレミアムセグメントとのギャップは依然存在しており、さらなる改善が求められます。
EVオーナーの再購入意向は非常に高い
注目すべきは、BEV(バッテリー式電気自動車)オーナーの94%が次もBEVを選ぶ意向を示している点です。これは、初回購入者にも共通する傾向であり、EVの使用体験がポジティブであることを示しています。
今後、メーカーが優れた体験を提供し続けることで、ブランドへの忠誠心を高めるチャンスにもつながります。
政策リスクが市場成長を左右
しかし、米国ではトランプ政権の誕生により、EV関連の税制優遇や公共インフラ支援が縮小されるリスクが高まっています。
J.D. パワーはこのような不確実性の影響で、2025年のEV市場シェアは横ばいとなる可能性があると見ています。
中長期的には2030年に市場シェア26%を達成する可能性があると予測されていますが、そのためには政策的支援の継続が不可欠です。
総合満足度ランキング(2025年EVX調査)
プレミアムBEVセグメント(上位3位)
BMW iX(790ポイント)※総合1位
BMW i4(783ポイント)
Rivian R1S(770ポイント)
マスマーケットBEVセグメント(上位3位)
Hyundai IONIQ 6(751ポイント)
Kia EV6(743ポイント)
Chevrolet Equinox EV(737ポイント)
まとめ:EVの未来はポジティブ、ただし鍵は「体験」と「政策」
2025年のJ.D. パワーEVX調査では、EV所有者の満足度が回復傾向にあることが確認されました。品質や充電環境の改善、税制優遇などが追い風になる一方で、新政権の政策次第では成長スピードが左右されることも浮き彫りになりました。
自動車メーカーにとっては、顧客体験の最適化と政策リスクへの備えの両輪が、今後の競争力の鍵を握るといえるでしょう。
※出典:J.D. Power「2025年 米国EVエクスペリエンス - オーナーシップ調査」